職員年頭訓示
職員年頭訓示
平成24年1月4日
-吉村知事は、年頭に当たって職員に向け、次のように訓示を述べました。-
皆さん、新年明けましておめでとうございます。
平成24年、この新しい年を、皆さんとともに無事に迎えられましたことを感謝しますとともに、被災された方々や避難生活を送っておられる方々が一日も早く平穏な生活を取り戻されることができるよう、心から祈念したいと思っております。
さて、今年は辰年でございます。
「登竜門」とか「昇り竜」などという言葉がありますように、大変縁起の良い年といわれます。
大震災の影響や円高、そしてTPP問題など様々な課題が渦巻いている中にも、再生可能エネルギー、そして6次産業化など、新しい変化の芽もきざしています。この新しい可能性をダイナミックにプラスの方向に展開しながら上を目指す。まさに山形県、東北地方の元気再生の年と位置づけ、この1年を明るい年にしてまいりたいと考えております。
まず、再生可能エネルギーについて申し上げます。
昨年3月に発生した東日本大震災は、わが国に甚大な被害をもたらした、誠に不幸な大災害でありましたが、私たちに多くの教訓を残してくれた側面もありました。大災害が発生した現代に生きる私たちは、この尊い教訓を活かしながら具体の形に展開し、安全・安心な社会を構築し、未来の世代に伝えていく役割を担っているものと考えます。
なぜ、原発を持たない県の知事である私が「卒原発」を提唱したのか、不思議に思われる方もおられると思いますので、この機会にお話しいたします。
一つには、大停電と燃料不足があげられます。
本県は、昨年の3月11日と4月7日の2回、ほぼ県内全域で大規模な停電を経験いたしました。地震が起きて一瞬のうちに県内の電気が停まりました。テレビが見られない、スチームがつかない、冷蔵庫も洗濯機も使えない。お風呂も沸かせない。電気が復旧してもガソリンや石油不足、燃料不足で車が動かない、機械を動かせない、施設やハウスが暖められない。そういう事態が発生して、多くの県民が不自由な生活を余儀なくされたことは皆さんご案内のとおりであります。
私は、一度に県内全域が大停電し、多くの県民が生活できなくなるような、そんなシステム自体がおかしいのではないか、問題だと思いました。そして、エネルギー問題にも目を開くことになりました。私たちの生活は、なんと脆い基盤の上に立っていたことか。便利さと効率性を求めるあまり、持続可能な社会を実現する努力を怠ってきたのではないかと考えるに至りました。
次に、原発事故であります。
現在、山形県には1万3千人もの福島県民の方々が避難しておいでになっておられますが、ほかにも全国に多くの方々が避難生活を送っておられます。ある日突然、この方々の人生が変わってしまいました。いつふるさとに帰って平穏な生活に戻れるのか見通しも立たず、悩み苦しんでおられます。このような理不尽なことは、二度と起こされるべきではないと考えます。
放射能は、汚染稲わら問題などで明確になったように、広範囲にわたって影響が及びます。そればかりか、現代を生きる私たちばかりでなく、子供の世代、そのまた子供の世代というように、将来にわたって長く影響が及びます。
また、使用済み核燃料でさえ、人類は処分に難儀しております。そういうコントロールできないものを使い続けていってどうなるのでしょうか。
しかも、わが国は地震国であります。いつ何時、また巨大地震が襲ってくるかわかりません。地震が来なくとも、テロということも考えられます。そういう可能性もゼロではありません。「想定外」という言葉は、できるだけ使わないようにしなければならないと思っています。
そして、本県も大きな風評被害を受けました。観光客が激減し、農畜産物の販売が苦戦いたしました。まさしく、放射能問題は、風評被害でさえも地域経済に大きな打撃をもたらすものだと実感したところであります。
私自身、原爆の恐ろしさは、書物や広島の原爆資料館などで間接的には感じておりましたが、電源として平和利用されるならまあいいのかなあ、と簡単に考えておりました。今まで安定した電力供給の恩恵を受け、文明生活というものを享受してまいりました。
しかしながら、原発の安全神話が崩れた今、リスクが明らかになった今、私たちは将来の世代のために、強い意志を持って、方向転換をしなければならないと考えます。
ただし、すぐに全ての原発を停めるということは現実的ではありません。省エネや代替エネルギーを活用し、再生可能エネルギーを増やしていくことで、いつかは原発依存から卒業しなければいけないということで、私は滋賀県知事とともに「卒原発」を昨年夏の全国知事会議で提唱するに至りました。
一方、本県は自然エネルギーの賦存量が豊富だということがわかっています。県土の
72パーセントが森であり、水が大変豊富であります。風も吹きますし、太陽も当たります。温泉も大変豊かであります。
本県は将来的には、エネルギー供給県として、その役割も果たすことができると考えています。
もちろん、エネルギーは基本的には国策ですから、国がしっかりと方向転換して、規制緩和や財政支援を進めていただかなければなりませんが、県としてもただ座して待つだけでなく、できるだけの施策を実施したいと考え、有識者からなるエネルギー戦略策定委員会を立ち上げました。県民の皆様や市町村、産業界のご意見もお伺いしながら、今年度中に戦略を策定し、平成24年度から着実に前に進めてまいります。
本県の資源を活用し、再生可能エネルギーを増やしていくことで、産業振興、技術革新につながると考えます。また、分散型のエネルギーを実現していくことで、リスク分散、地域活性化につながり、県民そして将来の世代に、より安心して暮らせる社会を残していくことができる、構築していくことができると考えています。
2つ目は、人材育成であります。
昨年の漢字に「絆」という文字が選ばれました。
東日本大震災は多くの犠牲者をうみ、誠に不幸な大災害でありましたが、一方で人と人との絆や、家族の絆、地域の絆などがどんなに大切なものであるか、人間社会の原点を考えさせられました。そういう貴重な教訓も私たちに示してくれたと思っております。
大自然の猛威の前に、人は無力でありますが、だからこそ支えあって生きることが大切だということを改めて認識させられました。
そしてこの困難な状況を乗り越えていくのもまた、人の力であります。本県の将来を担う、たくましい人材を育てなければなりません。まさに「人は石垣、人は城」、社会の基(もとい)は人であります。大震災が起きた現代だからこそ、人材育成という視点をあらゆる政策の土台に据えて、県政を展開してまいります。
以上、新年を迎え、私の所信の一端を述べましたが、平成24年度は「短期アクションプラン」の最終年度、仕上げの年にあたります。
これまで取り組んできた施策の成果を結実させ、次の段階へと発展させ、つなげていく年にしたいと考えています。
まず、景気・雇用対策をさらに推進するとともに、大震災の教訓を活かし、「減災」に向けた多面的な災害予防対策や、公共インフラ等の代替性・補完性機能の確保など、災害に強い地域づくりをしっかりと進めてまいります。
また、先ほど申し上げましたように人材育成を基本に据えながら、『短期アクションプラン』の5本柱であります「医療・福祉・子育て支援等の充実」、「地域産業の振興・活性化」、「農林水産業の再生」、「教育・人づくりの充実」、そして「県土環境の保全・創造・活用」にかかる諸施策に取り組んでまいります。
これまで着実に進めてきた歩みをさらに前へ前へと進め、第3次山形県総合発展計画の基本目標であります『緑と心が豊かに奏で合い 一人ひとりが輝く山形』を実現してまいりたいと考えています。
最後につや姫であります。
本格デビューから3年目を迎え、全国に誇れるブランド米としての評価確立と定着に向けて、大変重要な年となります。さくらんぼと並んで本県の代名詞となるよう取り組んでまいります。山形県民が誇りに思い、農業者が希望を持って取り組める、そして他の県産品を牽引していけるよう、育ててまいりたいと考えています。
昨年は、次から次へと災害が発生し、歴史的に天変地異の年だったと思いますが、皆さんとともに走り抜けてまいりました。皆さん方のこれまでのご労苦に心から感謝しますとともに、引き続き被災地への支援や避難者の方々への支援をお願いしたいと思います。
お互いに支えあって、東北の復興、日本の再生を目指して、山形県としての役割を果たしてまいりましょう。
新年にあたり、県民の皆様、そして県内にお住まいの皆様が、幸せを実感できる、元気で明るい山形県づくりに、皆さんと一緒に取り組んでまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。