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作詞家 藤林聖子さん

いま、山形から・・・ 寄稿このひと 作詞家 藤林聖子さん

 祖父のお通夜の時でした。お盆の終わり頃、とても暑かったのを覚えています。慌てて空港から駆けつけると、もう多くの親戚の方々が祖父の家に集まっていました。祖母も高齢ながら接客に追われ、母も葬儀屋さんとの打ち合わせなどで忙しくしており、成り行き上、私が台所に立ち昼食を作ることになりました。18歳からずっと地元を離れていたこともあって、そういった時に大人としてどう対処したらいいのか全く分からず、とりあえず母のものらしきエプロンをつけたのでした。

 おずおずしている私を見かねてか、近所に住む親戚のお姉様方が次々に指示を出してくれます。ご飯は炊いていたら間に合わないと、ご自宅から塩むすびにして持ってきて下さいます。なめこの洗い方さえままならない私に半ばあきれながらも、笑って教えて下さる方もいます。大きなお鍋を探したり、お味噌の在処ありか を探したり雑用に追われていると、ひととき祖父を亡くした重苦しい雰囲気から解放されたような気分でいました。

 なめこのお味噌汁が完成し、近所のお釜から寄せ集めたおにぎりと、あとはキュウリ漬けを大皿に盛って出せばいいよと、準備が終わりかけたその時でした。私の目の前にはありがたいことに3、4袋ほど別々のお家から来たキュウリ漬けが並んでいます。一度に出すには多すぎる量です。私は皆さんに尋ねたのでした。「どれを切ったらいいですか?」と。すると…。「うちのばーちゃんのよ、キュウリ漬けだけは結構うまいって言われんだな」「家んなは、朝もいで漬けだんだから甘いがもすんねよ」「家んなはよ…」と、それぞれ誰に言うでもなく、雑談のように話し始めました。お昼の12時も過ぎたのに、急に作業が停滞しはじめた台所で私は焦りました。「じゃぁ一番おいしいの切りましょうよ、どれですか?」と、さらに切り出したのでした。すると、その場は水を打ったように静まりかえってしまいました。そこでやっと気づく訳です、私がとても無粋な発言をしたことに。

 山形のお母さんのお漬け物は、それぞれの経験と工夫とアイディアがたくさん詰まった、お家の看板メニュー。絶賛されるお味の隠し味は、なかなか教えてもらえない最重要機密です。どれが一番かなんて決められるはずもなかったのでした。

 小さく可愛いお茄子のお漬け物、ぴりっと辛い青菜漬け、ご飯が進みすぎて困ってしまうおみ漬け。紫蘇の実が入った味噌漬け、赤かぶ漬けも目に鮮やかでおいしいですね。最近では東京のスーパーでも「だし」がいつでも売られるようになりました。

 私の山形の味は、優しくて、ちょっとシャイで明るいお母さんたちの「お漬けもの」です。若い世代のお母さんたちにも、大切に受け継いでいっていただきたい文化だと思っています。

 

プロフィール

藤林 聖子 ふじばやし しょうこ さん:作詞家 1995年デビュー。
サウンドのグルーヴを壊さず日本語を載せるスキルで注目され、独特な言葉選びにも定評がある。
E-girlsの大ヒット曲「Follow Me」(サマンサタバサ2012秋CMソング)を始め、平井堅、水樹奈々、BENI、三代目J Soul Brothers、Hey!Say!JUMP、BIGBANG、BOA、T-ARA等様々なジャンルのアーティスト作品から、テレビアニメ『ONE PIECE』主題歌「ウィーアー!」「ウィーゴー!」、『ジョジョの奇妙な冒険』『ドキドキ!プリキュア』等の主題歌や『仮面ライダー鎧武/ガイム』等の「仮面ライダー」シリーズ、『烈車戦隊トッキュウジャー』等の「スーパー戦隊」シリーズ、さらには映画主題歌、CMソングまで多岐に渡って活躍。 山形新聞「アートフロンティア」にてエッセイ連載中。
NHKみんなのうたに書き下ろした「29Qにくきゅうのうた」(歌:つるの剛士)の放送が4月-5月で決定。 2014年4月以降も新番組、新アニメのテーマソング等が多数決定しておりますので最新情報をご覧ください!
最新情報:http://www.oto.co.jp/profile/profile.php?no=55


 

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