前田慶次の足跡を訪ねて

米沢市の宮坂考古館では甲冑等の遺品を展示。NHK大河ドラマ「天地人」の影響などで全国各地から来訪者が。

前田利家の甥にあたり、戦国の世を自由に生きぬいた傾奇者(かぶきもの)※として知られ、数多くの逸話が残る前田慶次。上杉家に仕えて生涯を閉じたといわれる彼の足跡が米沢市内に残されています。

※傾奇者(かぶきもの)
戦国時代末期から江戸時代初頭にかけて、京や江戸で流行した社会風潮。派手な衣装や一風変わった異形を好んだり、破天荒な行動を取ることを「傾く(かぶく)」といい、そうした行動を取る者たちの総称。

枠に収まらず、最後まで自由奔放に生きた豪傑

朱漆塗紫糸素懸威五枚胴丸具足(しゅうるしぬりむらさきいとすがけおどしごまいどうまるぐそく)。宮坂考古館に保管されている前田慶次所用と伝えられる甲冑。

前田慶次(生年不詳〜1612年)は、前田利家の義理の甥にあたる人物。豊臣秀吉の天下統一ののち、しばらくは利家に仕えますが、養父の利久が亡くなって前田家との実質的なつながりがなくなると彼の「傾奇者」ぶりはさらに目立つようになります。自由奔放で束縛を嫌い、京都では著名な公家や文化人と交流して、和漢古今の書と親しみ、連歌や王朝文学を学び茶道の皆伝を受けるなど、自由気ままな生活を送っていたと伝えられています。そして、その頃に知り合ったのが、直江兼続。文武両道に秀でた兼続が仕える米沢藩主・上杉景勝の信義を重んじる人柄に魅かれ、慶次もまた仕えることになるのです。

慶次の自筆本とされる前田慶次道中日記(市立米沢図書館所蔵)。慶長6年に京都伏見を発ち、米沢に着くまでの26日間の道程を記したもの。
日本三文殊に数えられる亀岡文殊堂(大聖寺)※。慶次自筆の短冊五首が残されています。

豊臣秀吉亡き後の慶長5(1600)年、関ヶ原の戦いに連動して出羽の地でも乱戦のるつぼとなりました。政治の主導権をめぐって、徳川家康を盟主とする「東軍」と石田三成を中核とする「西軍」。当時、五大老であった上杉景勝は西軍の重鎮として反徳川の急先鋒でした。一方、山形城主最上義光は徳川と強固な盟友関係で、上杉攻め奥羽諸大名の主将の役を担っていました。西軍の挙兵により家康の西上を知った上杉は、最上侵攻を決断し大軍を率いて怒涛のごとく最上領内へ攻め入りました。最上勢も少ない兵力ながら地の利を生かし徹底抗戦し、まれにみる激戦となったのです。これがいわゆる「慶長出羽合戦」です。

この慶長出羽合戦で慶次は、兼続に従って出陣。関ヶ原の戦いで西軍の敗北を知らされた兼続は撤退を余儀なくされますが、最上軍の激しい追撃を受け、撤退もままなりません。そのような中、このとき旗下にいた慶次が追撃する最上軍相手に奮戦し、上杉軍を撤退させることに成功したのです。景勝は会津120万石から米沢30万石に削封され、家臣の多くが離れるなかでも、慶次は他藩からの誘いを断って上杉家に留まりました。隠居後は米沢市の堂森地区に小さな庵「無苦庵」を建て、世俗にこだわらず、自然とともに悠々自適な生活を送ったと伝えられています。その頃に親交のあった住民に贈った甲冑や槍など慶次ゆかりの品々が代々引き継がれ、その一部は今も現存しています。(個人宅にあり、非公開としているものもあります。)また、慶次直筆の道中日記や短冊五首も県内施設に所蔵されています。

※亀岡文殊堂
所在地:山形県高畠町
丹後(京都)の切戸の文殊、大和(奈良)の安倍の文殊とともに、日本三文殊の一つで、昔から、『三人よれば文殊の知恵』といわれるように、学問の神様として知られている。入学、入社試験等の合格祈願に訪れる人があとを絶たない。

慶次ゆかりの里、堂森

無苦庵のほとりに湧いているのを前田慶次が発見し、生活用水に使ったと伝わる慶次清水。

前田慶次の生没年や場所には諸説あるものの、米沢では慶長17(1612)年6月4日が命日とされています。米沢市堂森地区には、前田慶次供養塔や慶次清水などのゆかりの地が点在しています。2009年2月に地元有志が中心になって設立した「米澤前田慶次の会」による周辺整備が進んでからは、その足跡も訪ねやすくなりました。現在の人気ぶりは小説やマンガなどの影響が大きく、全国各地から足を運ぶ人が増えているそうです。風流を愛し、戦国の世を自由に生きた前田慶次の生き方は、爽やかで痛快そのもの。身近な地で繰り広げられた歴史に目を向ければ、歴史の奥深さや地域の魅力を再発見できることでしょう。

無苦庵があった堂森地区にある堂森善光寺には、昭和55年に前田慶次供養塔が建てられています。
取材協力
■米澤前田慶次の会
住所:米沢市万世町桑山940-1
TEL:0238-28-5971
■宮坂考古館
住所:米沢市東1-2-24
TEL:0238-23-8530
開館時間:10:00~17:00(10~3月 ~16:00)
休館日:月曜日、祝祭日の翌日
入館料:大人300円 大高生200円 中小生100円


 

この記事に対するお問い合わせ

ナビゲーション

更新情報

  • 2009-12-22 公開

関連情報