納豆汁

しんしんと降り積もる雪。寒さが厳しいこの季節に食べる、山形の郷土料理「納豆汁」は、雪国ならではの知恵が込められています。
山形では、1月7日に七草粥の代わりに納豆汁を食べる習慣があります。新鮮な食材がいつでも手軽に手に入る現在と違い、昔は、豆腐、納豆、油揚げ、味噌と4種類も大豆製品の入る納豆汁は、冬の間の貴重なタンパク質をとれる料理として、各家庭で食べられていました。今では珍しくなりましたが、最上地方では「つっとこ納豆」と呼ばれる自家製の納豆を作っていたそうです。煮た大豆をわらに入れて、両端を縛ります。その上に布団を何枚も掛け保温することで、自然発酵し納豆が出来上がります。
また、納豆汁に欠かせない食材が、里芋の茎を干して乾燥させた「芋がら」です。歯ざわりの良い独特の食感が特徴の保存食です。ほかの具材としては、塩漬けにしていた山菜類、きのこ、こんにゃく、大根、里芋等を入れることもあり、地域や家庭によってさまざまです。
雪国山形の先人たちは、体の芯から暖まる納豆汁で、冬の間に不足しがちな栄養素を補い、長い冬を乗り越えてきました。
旬の農産物販売と毎月季節感あふれるイベントを開催している、新庄市の「産直まゆの郷」で、新庄のお母さんたちに最上地方の「納豆汁」を作っていただきました。
納豆汁10人分の材料です。
・納豆 400~500g
・木綿豆腐 一丁(450g)
・油あげ 3枚
・わらび (塩漬け)300g
・うど 150g
・きのこ(もだし又はなめこ) 300g
・干しからどり(芋がら) 25g
・水 800cc
・味噌 大さじ8杯
・せり、ねぎ 適量
納豆をすり鉢で形がなくなるまですり潰しておきます。星川さんは、すりこぎの代わりに大根を使います。納豆が逃げにくく、すり潰しやすいと、実家のお母さんに教わってきたそうです。また、八鍬さんのお宅では、半日お酒に浸して柔らかくなった納豆をすりこぎで潰すそうで、材料の下ごしらえをみても各家庭に伝わる方法があるようです。
冬の保存食として塩漬けにしていた山菜、きのこ類を塩出しします。最上地方では、里芋の一種「からどり芋」の干した茎「からどり」を使います。からどりの芋がらは、食べた時のえぐみが少なく、歯ざわりも良いそうです。からどりは、お湯で戻し、冷めたら手もみしながら洗います。
わらび、からどりを1cmに切り、湯通して油ぬきをした油あげと塩出ししたわらび、「もだし」と呼ばれるきのこ、うどを水で煮ます。
材料が煮えたら味噌、豆腐を加えてひと煮立ちさせます。すり潰した納豆を煮汁でゆるめて溶かし入れ、沸騰直前に火からおろします。納豆を入れてから沸騰させないのがポイントです。
お椀にもって、お好みできざみせり、ネギをのせ、唐辛子をふりかけて出来上がり。
最上地方では、大晦日にお雑煮を食べ、元旦から3日食べるほどの量を作り、朝、昼、晩と「納豆汁」を食べるそうです。正月が明け1月7日の七草にもまた「納豆汁」。そして、冬の法事でも「納豆汁」を食べるそうです。人が集まる時には、「納豆汁」でもてなすため、大きな鍋で20人分以上は作ります。
「雪道と納豆汁は後の方がいい」という言葉があると教えていただきました。降り積もった雪道は、先に歩くと容易でないので、誰か先に歩き踏み固まった後の方が良い。納豆汁は、出来上がったばかりよりも、何度も温めなおした方が美味しいとのいわれだそうです。納豆汁を温め直す時は、底に沈んだ納豆が焦げ付かないようかき混ぜながら温めると、より一層おいしくなった納豆汁をいただけます。
寒い冬に体の芯から暖まる「納豆汁」。ぜひご家庭で作ってみてはいかがでしょう。
干しからどり、塩漬けした山菜は「産直まゆの郷」でも販売しています。