冷たい肉そば

谷地名物「冷たい肉そば」:いま山形からno192 おらほの自慢 vol.29

谷地が元祖、冷たい肉そば

江戸時代に最上川舟運と紅花の集産地として栄えた河北町(かほくちょう)では、「冷たい肉そば」が長年にわたって愛されています。「山形のそば=板そば」というイメージがありますが、河北町谷地(やち)では「そば=冷たい肉そば」といっても過言ではないでしょう。一度食べると病みつきになる人も多く、谷地では、夏も冬も季節に関係なく「冷たい肉そば」がスタンダード。最近は町以外で食べられる店が増えていますが、「子どもの頃から慣れ親しんだ谷地の味でなければ」とこだわる地元っ子も少なくありません。

「冷たい肉そば」は、鶏だしのきいた醤油味の冷たい汁そば。店ごとに個性はあるものの、ちょっと歯ごたえのある鶏肉とネギがのった冷たいそばに、鶏だしをきかせた醤油ベースの甘いつゆが特徴です。冷たいといっても氷が浮かんでいるわけではなく、麺のコシが引き立つように適度に冷やして仕上げます。脂が白浮きして固まってしまわないよう、お店ごとに独自の製法があるようです。

もとは鶏肉ではなく、馬肉だった

「冷たい肉そば」のルーツは、 大正時代にさかのぼります。大正5年創業の老舗「そば処 一寸亭(ちょっとてい)本店」の3代目ご主人吉田吉弥さんに話をうかがうと、「当時は居酒屋のような店はなく、そば屋で一杯やるのが主流だったんですよ。甘じょっぱく煮からめた馬肉を肴に、締めは盛りそばというスタイルが定着していたようです。ある時、馴染みのお客が残った肉をそばにかけて食べてみたら、これがおいしいと好評で。それから、『この前の煮込みとそば、一緒に出して』と注文されるようになったのがはじまりと聞いています」。そばやつゆを冷たくしたのは、時間が経ってもそばが伸びずにおいしく味わえるようにとの配慮からだそうです。

ところが、戦時中になると馬肉が手に入らなくなってしまい、ほかの肉で代用することに。当時、町に多かった養鶏場の鶏肉を使ってみたら、思いのほか客の評判もよく、鶏肉の肉そばが正式メニューになりました。昭和50年代に入って新しいそば処が次々に開店すると、肉そばを味わえる店も1軒、また1軒と増え、町の名物として親しまれるほどに広まったというわけです。現在、町内には肉そばを食べられるお店が20軒ほどあって、うち16店が「谷地の肉そば会」として味を守り続けています。味には店ごとに個性があり、「私はあの店がお気に入り」など人それぞれに好みが分かれるようです。

「谷地の肉そば会」会長を務める、「そば処 一寸亭本店」の3代目ご主人吉田吉弥さん。

「谷地の肉そば会」会長を務める、「そば処 一寸亭本店」の3代目ご主人吉田吉弥さん。

安くて、おいしくて、地元の人に愛されている谷地の名物料理「冷たい肉そば」。

安くて、おいしくて、地元の人に愛されている谷地の名物料理「冷たい肉そば」。

ご当地グルメで町おこし

谷地には、発祥の地ならではのこだわりがあるそう。肉はこりこりした食感とコクのあるだしがとれる鶏肉を使うことや、つゆは鶏だしをメインに鶏の風味を損なわない程度に鰹と昆布をきかせる、そばはつなぎ入りの田舎そばを使うなど、が谷地流。「いろんな冷たい肉そばのバリエーションがあっていいと思うんです。でも、谷地が発祥ですから、これが本来の『冷たい肉そば』という味を広めたいんです。長い間、地元の人たちに愛され続けてきた郷土料理をたくさんの人に味わってもらえたら」と河北町商工会の逸見朋愛さん。

現在は地元の有志が中心となり商工会や「谷地の肉そば会」がバックアップして、元祖「冷たい肉そば」を全国へ広める活動に力を入れています。今年の1月と3月に開催された河北町在住の素人が作り、人気投票を行なう「家庭の味 冷たい肉そば選手権」には、寒い時期にも関わらずたくさんの人たちが訪れ、行列ができるほどの活況だったとか。数年後にはB級ご当地グルメの日本一決定戦「B-1グランプリ」への出場を目標に、今は知名度をアップさせるための取組を企画しているそうです。また、冷たい肉そばで町おこし活動を行なうために「かほく冷たい肉そば研究会」を設立しました。今後イベントなどで出店を予定しているので、県内外で行なわれる食のイベントでお手伝いをする「そば研サポーター」を募集しているそうです。町を挙げての活動がヒートアップしている様子が感じられて、冷たい肉そばが全国区になる日もそう遠くないと感じました。

小さい頃から谷地の肉そばを食べて育ったという、河北町商工会の逸見朋愛さん。

小さい頃から谷地の肉そばを食べて育ったという、河北町商工会の逸見朋愛さん。

第1回の出場は4組。試食して一番おいしかったと思うそばに投票します。

第1回家庭の味冷たい肉そば選手権の出場は4組。試食して一番おいしかったと思うそばに投票。

好評のため、3月には「第2回 家庭の味 冷たい肉そば選手権」が行われました。

好評のため、3月には第2回 選手権が行われました。出場は8組。

子どもも大人も、谷地っ子は冷たい肉そばが大好き。

子どもも大人も、谷地っ子は冷たい肉そばが大好き。

家庭でできる、冷たい肉そばのつくりかた

「そば処 一寸亭本店」の3代目ご主人吉田吉弥さんに、家庭で手軽にできる「冷たい肉そば」のつくりかたを教えてもらいました。

【材料】つくりやすい分量(5人前)

  • ●水:1.5リットル
  • ●鶏肉(もも肉 または 胸肉):200g
  • ●醤油:100ml
  • ●めんつゆ:30ml
  • ●酒:100ml
  • ●そば:1人分150~180g×人数分
  • ●刻みネギ:適量

ポイント

  • そばをゆでる時、吹きこぼれそうになったら、差し水はしないで火力を弱めましょう。そばが絶えず動いている状態をキープできる程度に調整します。
     
  • そばのゆで加減をみる時は、1~2本すくい上げて水にさらしてから硬さを確かめます。

つくりかた

  1. 1)大きめの鍋に水を入れて強火にかけ、沸騰したら食べやすい大きさに切った鶏肉をゆでる。
  2. 2)煮立ったらアクをとり、酒を加え、さらに中火で15~20分煮る。
  3. 3)砂糖、醤油、めんつゆを加え、ひと煮立ちしたらに火からおろす。
  4. 4)鍋の中身をボウルに移して、氷水をあてて粗熱をとる。
  5. 5)別の鍋にたっぷりの湯を湧かし、そばをゆでる。
      ※完全に沸騰しないうちに麺を入れると、鍋底についてしまうので注意。
  6. 6)好みの硬さにゆであがったらザルにあけ、流水の下でもみ洗いをして、氷水に入れて締める。
  7. 7)ザルにあけて、よく水を切り、どんぶりに盛る。
  8. 8)完全に粗熱のとれた4をたっぷりとかけ、刻みネギを添えたら、できあがり。

取材協力

河北町商工会

かほく冷たい肉そば研究会

●そば処 一寸亭本店
 住所:西村山郡河北町谷地所岡2-11-2
 電話:0237-72-3733



 

この記事に対するお問い合わせ

ナビゲーション

更新情報

  • 2010-7-27 公開

関連情報