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山形新幹線「つばさ」車内販売員 茂木久美子さん

時代の変化から、女性のライフスタイルだけでなく、ワークスタイルにも新たな流れが生まれています。どのような仕事をするかはもとより、自分の人生の中で仕事をどう位置づけて、どんな働き方をするかも大切なこと。山形新幹線「つばさ」の車内販売員(アテンダント)として働くかたわら、自身の体験を元にした講演活動もこなしている茂木久美子さんにお話をうかがいました。

車内販売のカリスマ

「工夫した中にも、失敗したものがたくさんあるんですよ」と語る茂木さん。

山形新幹線「つばさ」の車内販売員を務める茂木久美子さんは、群を抜く売上高が注目され、たびたび「車内販売のカリスマ」としてテレビや新聞でも取り上げられるようになりました。東京ー山形の1往復における1人あたりの平均売上は、10〜12万円のなか、茂木さんは3年前に1往復半で50万円を達成しました。しかし、入社直後からこんなに売ることができたわけではなく、その陰には独自の工夫と努力があったといいます。

商機を増やす、スピードアップの秘訣

商品が山積みのワゴンは100キロを超える重さに。最初の1往復で客層を見極めて商品を積み替えることも。
「車内の空気を明るく変えることができる」と山形弁で応じるのが茂木さんの魅力。乗客のリクエストに応えて花笠踊りを披露したこともあるそうです。

「つばさ」の片道運行時間は3時間ほど。販売員が車内を平均3往復するところを、茂木さんはその倍を超える7往復もするといいます。「売上を増やすにはお客さんに会う回数を増やせばいい。次に、会計にかかる時間を減らせないかなと」。そこで思いついたのが、釣り銭を早く渡すこと。右ポケットには100円玉と500円玉、左ポケットには10円玉と50円玉を入れておき、硬貨を瞬時にポケットの中から指の感触で取り出します。

ワゴンを押さずに、後ろ向きに引いて歩く「バック販売」をするようになったのは、「お客さんの足や肩にワゴンや私の身体がぶつからないように」との配慮から。その結果、乗客の視線を感じ取ることができるようになり、買おうかなという一瞬の表情を見逃すことが少なくなったといいます。乗客が乗り降りするごとに車内の様子を把握して、客層に応じてワゴンの商品配置を変えるなど、売れ筋が目立つように気を配っているのだとか。

最年少でチーフインストラクターに

笑顔も魅力的な茂木さん。そんな彼女に会うのを楽しみにしている“リピーター”も多いそう。

早さや販売テクニックだけでなく、乗客とのコミュニケーションも大切にしている茂木さん。「方言がコンプレックスだったんです。最初は隠していたけど、山形弁で接客したら肩の力を抜いて接客できるとわかって。状況によって使い分けていますが、今では山形弁も販売の武器になっていますね。『コーヒーはあったかいのど、つったいの、どっちいいべ?』これを標準語で言うと印象が変わるでしょう?」。発着時間やトイレの場所なども頭に入れておいて、どんな状況にも対応できるよう心がけているそうです。

マスコミに取りあげられてからは全国各地の企業や自治体からの講演依頼が来るようになって、月に5回も講演をこなしたこともあったそうです。大勢の人前で話すことに緊張したり、戸惑う気持ちもあったものの、回を重ねるにつれて意識が変わってきたといいます。「私自身も学ぶことが多くて、講演で人に伝えることも大切な仕事のひとつと思うようになりました。私が伝えられるメッセージをいろんな人の心に届けたい。今はなんだか、そんな使命感に燃えているんです」。

群を抜く売上成績が評価されて、06年10月には最年少でJR東日本管内の車内販売員約1300人の中で3人しかいないチーフインストラクターに抜擢。現在は販売のかたわら、後輩の指導にもあたっています。

これで終わりじゃない

今後の目標を尋ねると、「仕事では、いつも何か工夫の余地がないかを考えているんですよ。現状に満足することはなくて、チーフインストラクターとしても日々学ぶことはあります。プライベートでは、そうですね…結婚かなぁ」と、一瞬、素に戻って照れた笑顔が印象的でした。

モノを売るということだけでなく、お客さんへの心配りを大切にしている茂木さん。ワゴンを後ろ向きに引いたり、山形弁で親しみやすい雰囲気づくりを心がけたりと、創意工夫を重ねた努力は「おもてなしの心」の表れのように感じました。休みをとれないほど多忙を極めるそうですが、そうした講演活動も“車内販売のカリスマ”としての彼女にいっそう輝きを与えてくれるはずです。

【PROFILE】
茂木久美子 Kumiko Moki
株式会社日本レストランエンタプライズ
チーフインストラクター
1980年生まれ、天童市出身。山形城北高校卒。1998年からJR東日本の車内販売会社、日本レストランエンタプライズ(NRE)山形支店で山形新幹線車内販売員として勤務。2005年10月にインストラクター、06年10月に最年少でチーフインストラクターに抜擢された。
取材協力
株式会社日本レストランエンタプライズ


 

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  • 2010-01-22 公開

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