カーレーサー 黒田吉隆さん

中学3年でカートに乗り始めて、高校進学後に本格的に取組むようになり、フォーミュラーカーの世界に足を踏み入れたレーシングドライバー・黒田吉隆さん。2009年シーズンから全日本F3選手権に参戦し、来季はさらなる活躍が期待される若きレーサーにお話を伺いました。
おじに誘われてカートの道に
-レーサーになるきっかけは?
「趣味でカートをしていたおじに誘われたのがきっかけです。中3の終わり頃だったかなぁ。飽きっぽい性格なのに、高校に進学してからも続けて、乗っているうちにどんどん面白さに目覚めた感じです。その後、全国カート選手権で優勝して、気づいたら本格的に取り組むようになっていましたね」
-モータースポーツの魅力は?
「走っている時は自分の世界に入っていて、その時間・空間が好き。無意識に走ろうという気持ちにもなるが何も考えずに自分の世界を味わえること、かな」
レーサーとしての生活
-普段はどんなトレーニングをしているんですか?
「モータースポーツは、他の競技と比べると実践の練習量が少ないと思うんです。特殊なマシンだし、練習場所も限られますし。でも、走るだけが練習じゃないですからね。イメージトレーニングをしたり、コースを見て分析したり、データを見返してみたり、頭の中でやれることはたくさんあるんです」
-レースでは体力を使いますか?
「シートに座っているレースは、スポーツじゃないと思われる人もいるかもしれませんね。でも、走行中は4~5Gという重力、つまり60kgの人なら300kgもの力が加わって、F1レーサーは1レースで3kgも体重が落ちるともいわれているんです。レーシングドライバーはアスリートで、筋力を鍛えるトレーニングは欠かせません。だから、シーズンオフの時間の過ごし方も大切。モータースポーツは意外に過酷なスポーツなんですよ」
単身ドイツへ渡り、ステップアップ
-高校卒業後にドイツに渡られましたね。自身が変わったと感じることは?
「以前は、人と話すのがあまり得意なほうではなくて、人見知りな性格でした。でも、高校卒業後に海外で1年間生活を経験したことで変わったと思いますね。名門レースチーム・レッドブルの試験に合格してドイツに渡ったときは、ドイツ語はもちろん英語もちゃんと話せない状態だったので、本当に体当たりでした(笑)。聞き取れるようになるまでに2ヶ月、コミュニケーションが取れるようになるまで3ヶ月かかったかな。レーサーとしての経験を積めたことも大きかったけど、海外でのひとり暮らしを経験したことで人とのコミュニケーションが苦にならなくなりました」
-地元を離れてみて気づいた、山形の魅力は?
「やっぱり食べ物かなぁ。ドイツにいた頃はヨーロッパの各地を回ったり、今年はアジアを転戦していろんな国に行ったけれど、日本食がいちばんおいしい。ドイツ時代は、家から米を送ってもらって自炊していましたよ。水がおいしいし、やっぱり山形の米はおいしいですよね。本当に実感しました」
夢に向かって
-将来の夢は?
「おじさんにきっかけを与えてもらったり、父親に後押ししてもらったりと環境に恵まれました。だから、いつも周りに対する感謝の気持ちを忘れないようにしています。もしカートに出会わなかったら自分は何をしていたんだろう、と思うことがありますよ。目標もなく学生時代を過ごしていたのかもしれない。だから、子どもに夢を与える存在になりたいと思っています。そのためにはレースで結果を出さないと」
-では、カーレーサーとしての夢を聞かせてください。
「F3は、F1への登竜門とも言われています。だから、もちろん将来的にはF1レーサーになるのが目標です。そして、誰からも尊敬されるような存在になりたい。将来的にはレースに関わる仕事がしたいとも思っています」
モータースポーツの最高峰・F1という目標に向かって努力を続ける彼の姿を見ていると、「自分なりの夢を見つけること、そしてそれに向かって努力を続けること」の素晴しさを教えてくれる気がしました。何げない日常生活の延長線上に、夢の「種」は隠れているのかもしれません。
- 黒田吉隆 Yoshitaka Kuroda
- 1987年生まれ、山形市出身。アジア人として初めてF1参戦チーム「レッドブル」のジュニアチームと契約し、フォーミュラBMWドイツ選手権フル参戦。2009年シーズンから全日本F3選手権に参戦し、さらなる高みを目指している。
- 自動車レースのカテゴリーのひとつで、Formula(フォーミュラ)とは「決まり」「規定」を意味します。FIA(国際自動車連盟)が定義するフォーミュラカー四輪レースには、F3以外にもF1やGP2などの競技がある。
- 全日本F3選手権は、Nクラス、Cクラスのタイトルがあり、混走によって、どちらもシリーズとして行なわれている。Nクラスは、同一企業の車種で、1世代旧型のマシンで争われている。