ノルディックスキー 太田渉子選手

フィンランドへの留学で選手としてのレベルアップをはかるためだけでなく、現地の高校に通って英語の勉強にも力を入れている渉子さん。毎年7月ごろに故郷の尾花沢市に戻り、来季に向けた合宿がはじまります。

2006年の冬季パラリンピック・トリノ大会では史上最年少(当時16歳)で日本代表に選ばれ、銅メダルを獲得。そしてその年、さらなる高みを目指して親元を離れてフィンランドへ留学。来年のバンクーバー冬季パラリンピック出場へ向けて、合宿のために帰郷中の太田さんにお話を伺いました。

クロスカントリーとの出会い

早く走ることの楽しさを味わえたことが、クロカンに夢中になるきっかけに。

-スキーを始めたのはいつですか?

「小学3年生の時に友だちに誘われてスポーツ少年団に入ったのがきっかけです。はじめた頃は遅かったのに徐々に早く走れるようになって、高学年ではリレーの選手に選ばれたんです。タイムが縮まるのがうれしくて夢中になりました。『楽しさ』がここまで続けてきた原動力になっているかもしれません」

-尾花沢ではクロスカントリースキーが盛んなんですか?

「そうですね。でも、小学生のときにスポーツ少年団でクロカンをしている子は多いのに、中学生になると競技を止めてしまう子が多いのは残念。もったいないと思います。企業に所属して競技を続けられることは、選手としてとても恵まれていると思っています。まわりへの感謝の気持ちを忘れずに、長く選手を続けていけたらいいなと思います」

バイアスロンと出会い、メダリストに

的を1発はずすごとにペナルティーエリア1周を課されて、タイムロスに。集中力が求められます。

-トリノでバイアスロン(※)に出場するため射撃練習を始めたのは、本番の1年前だそうですね。

「監督に勧められて始めました。走力ではまだまだ海外の選手に劣っているので、得意の射撃を生かせるバイアスロンには力が入ります。ただ、海外の選手も射撃の腕を上げているので、もっと腕を磨きたいですね」

-バイアスロンの面白さは?

「クロスカントリーと射撃を交互に行って、決められた距離を走破して速さを競うのがバイアスロン。クロカンで上がった心拍数をいかに落ち着けて、集中して、ミスのない射撃をするか。滑るのが速くても、射撃で駄目だったら逆転されちゃう。焦ってハズしたら、その分だけペナルティで多く走らないといけないので、打つ瞬間はドキドキしてスリル満点です。クロカンの『動』と射撃の『静』の組み合わせが難しさでもあり、面白さかな」

留学して地元を離れ、気づいたこと

年に3~5つの大会があって、ノルウェー、カナダ、ドイツなど海外を遠征し、それ以外はフィンランドでの留学生活。地元に戻るのは、年に数回だそう。

-留学3年目ということですが、フィンランドに行って苦労したのはどんなことですか?

「最初はまったく言葉がわからなくて苦労しました。日本語の通じない環境で、はじめて英語の勉強に身が入るようになったというか。3ヵ月目で相手の話していることがわかってきて、半年でようやく日常会話をこなせるように」

-日本を離れて感じたことは?

「四季の豊かさかな。フィンランドは1年の半分が冬で、その他の季節は年によって期間もまちまちなんです。春夏秋冬に移り変わる季節の風景や旬の食べものが味わえるのは、四季に恵まれた日本ならではの魅力だと実感しました」

-現地の食事になじめましたか?

「滞在が長くなるほど、白いごはんが恋しくなりました。フィンランドにも米はあるけど、日本のとは全然違いますから。今は父が送ってくれた山形米を炊いて食べています。毎年、夏に帰省するのは楽しみにしているんです。合宿で実家にはなかなか戻れないけれど、大好物のスイカが食べられるし、お腹いっぱいおいしいごはんが食べられるから(笑)」

バンクーバーに向けて

「昨シーズンはレース後半にスタミナ不足で失速したのが反省」と渉子さん。今シーズンは筋力アップにも力を入れています。
インタビュー当日はあいにくの雨で、撮影当日は室内での筋トレが主体に。(東京の)トレーナーがつくった、腹筋、背筋、股関節、太もも裏を重点的に鍛えるメニュー。

-シーズンオフのこの時期は、どんなトレーニングをしているんですか?

「夏は体力づくりが主体です。今日の筋トレは腹筋、背筋、股関節、太もも裏を重点的に鍛えるもので、トレーナーに考えてもらったメニュー。レース後半にスタミナ不足で失速して思うような結果を残せなかった昨シーズンの反省から、筋力アップに重点を置いています。天気がいい日は外でローラースキーやランニングをすることもありますよ」

-いよいよ来シーズンはパラリンピックですね。目標を聞かせてください。

「出るからには金メダルを目指します! けっして簡単ではないけれど、トリノで銅メダルを獲った時から、次のバンクーバーでも同じように表彰台に立ちたいと強く思っていました。選手としては、トリノ大会がスタートだと思って留学も決意したし、より上を目指したい。そのためにも、日々の練習や合宿でトレーニングを積んで、ケガなく本番に臨みたいです」

フィンランドへの留学で選手としてのレベルアップをはかるためだけでなく、現地の高校に通って英語の勉強にも力を入れている渉子さん。休日には友人とレジャーを楽しんだり、現地での暮らしを満喫することが生活に潤いを与えてくれる、いいエネルギー源になっているようです。

最初はうまくできないことも、続けることで上達できる。大事なことは、いろんな扉をノックすること。自分が楽しいと感じることや、好きだと思えることの延長上に何かが見えてくるはず。その扉を開けて、さらに羽ばたこうとしている渉子さんが、すべての人にいろんな可能性が秘められていることを教えてくれた気がします。パラリンピックでの活躍をみんなで見守っていきましょう。

ストック1本のハンディーを感じさせない、力強い走り。
【PROFILE】
太田渉子 Shoko Ohta
平成元(1989)年7月27日生まれ、尾花沢市出身。2006年トリノパラリンピックで、史上最年少で日本代表に選ばれ、ノルディックスキー女子/バイアスロン12.5km立位で銅メダルを獲得。現在は山形県立北村山高等学校を休学し、スキーと外国語取得のためフィンランドに留学中。
バイアスロン【biathlon】
biは「2」を、athlonは「競技」の意味。冬季近代二種競技のひとつで、クロスカントリースキーとライフル射撃を組み合わせた距離競技を指す。競技はスプリント、パシュート、個人、マススタート、リレーの5種目に分かれていて、選手はスキーをつけ、銃を背負ってスタートする(2008年現在)。ライフル射撃では呼吸を止めながらの精密射撃が求められるが、クロスカントリーで息が切れた状態で行うことはハードで、見た目以上に苛酷な競技といえる。


 

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  • 2009-11-17 公開

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