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農林漁家民宿おかあさん百選「暮らし考房 栗田キエ子さん」

いま、山形から・・・ 山形にある日本百選 農林漁家民宿おかあさん100選「暮らし考房 栗田キエ子さん」

 「本当の豊かさ」とは何か?山村の豊かな暮らしを考え、体験、宿泊できる場を提供してきた「暮らし考房」の栗田さんご夫妻。奥様の栗田キエ子さんは、農林漁家民宿おかあさん100選に選ばれています。

山村の暮らしを考え楽しむ「暮らし考房」
暮らし考房 栗田キエ子さん。洋服はご自身で染めた藍染め。

 銘木“金山杉”の産地として知られる山形県最上郡金山町の中でも最も山奥の小さな集落、杉沢地区。3月、早春とはいえ積雪がまだ2メートル以上もありそうな雪の壁の間を走り、集落の一番奥、1軒のログハウスに「暮らし考房」の看板が掲げられています。

暮らし考房 手作りログハウスの宿泊棟、ログ・フェーリエン。

 「林業や農業を辞め地域から離れていくということが各地の農山村でおこっていました。その現実をつきつめた時に、あまりにもお金中心に考えすぎるからではないか。どれだけ沢山のお金を得るかではなく、得たお金の中でどのように暮らすかということを考えれば、決して山村は貧しい社会ではないし、ここにしかない暮らしというものをみんなで一緒に考えて、創造していこう」との想いから平成5年に「暮らし考房」を始めたそうです。一緒に考えるから「工房」ではなく「考房」。

ログハウスの2階から見下ろす。

 「暮らし考房」を始める前から、家業である農業のかたわら、農業体験をする高校生の修学旅行の受入れを行っていました。また、交流のあった大学の先生や仲間たちが、築200年にもなる母屋で、たくさん語り合い、泊まっていく、人の集う家でした。そうした人々が集まるための場が欲しいと、平成4年に建てたのがこのログハウスです。

明るい光が入る2階。中央の柱も家族で選んで決めたもの。

 木の価格が下がったこともあり、木を活かすために切った間伐材を利用して、大工さんと一緒に家族の手で建てられました。あちこちのログハウスを見て回り、隣に建つ母屋とのバランス、湿度や雨の多い気候も考慮し、白壁の日本家屋風のログハウスにしました。キエ子さんは「息子が方眼用紙に書いた設計図を元に、夫が家の山で切った木を家族で磨きました。100本磨いたら腱鞘炎になっちゃってね。でも、これが私たちにとっての豊かな暮らし。自分の家のものを理解して、それを活かす。木材にして売ったとしてもたいしたお金にもならないけど、使い方で価値を見出せるし、自分の山で育った木だから愛着もあります」と笑顔で話します。

 

この場所に来て体験してもらう
キエ子さんの藍染めの作品。

 体験メニューは、特別に用意されたものでなく、自分たちの暮らしの中でしていることを公開していこうと始めたものでした。「体験したい人を迎えるために何かをしようとするのではなく、私たちのやっていることを一緒にしてみたら、あーこんな迎え方もあるんだ。そして、泊めてといわれて泊めたら、だんだんと希望者が増えてきたんです。今でこそグリーンツーリズムなんてあちこちでやっていますけど、うちは20年以上も前にどこもやっていない時だったから珍しかったんでしょうね」とキエ子さん。

 
毎年藍染め体験に訪れる金山高校の生徒たち
ツリーテラスから田んぼ、畑、山々を眺めることで自然の豊かさを体感する。

体験メニュー一番人気は藍染め。藍染の染料となる「すくも」作りは、非常に時間と手間のかかる作業です。藍染めを本業としている人でも、仕入れた「すくも」を使うことがほとんど。キエ子さんは、藍を畑で栽培し、「すくも」まで自分の手で作っています。そして、いくら求められても出張体験は行わず、足を運んでもらいます。「材料から染物ができるまでを全部自分でしていることで、体験する方への説明も自信が持てます。ここに来て体験してもらうことで見えることがあるのだと思います。田んぼ、畑、山や空。チョウチョウやオニヤンマが飛んでいたり、ゆりが咲いていたり。そうしたものを見て、感じることでここに来た人の世界が広がっていくから」と言います。

 キエ子さんの藍染めは1年ぐらいで色が落ち着くと色落ちしないということで、体験するだけでなく、購入するファンも多いそうです。

 

木の命、楓の涙
メープルサップ「きさらぎふうろ<楓露> 」。大学生になる孫が5歳の時に描いたラベル。家族の歴史が刻まれている。

 「2月泣きイタヤ」という言葉があるそうです。旧暦の2月にイタヤカエデに傷をつけると木が泣き、その涙が甘いという言い伝えが昔から炭焼きの人たちの間であったと言います。このイタヤカエデの涙、樹液をいただいて、楓の樹液という意味の「メープルサップ」を「きさらぎふうろ<楓露>」として15年前から提供しています。杉沢地区に自生するエゾイタヤカエデの樹液100%で、ショ糖や各種のミネラルを含み、そのまま飲むと楓の香りとほのかな甘みが広がります。ご飯を炊く時、パンなどの生地、ウイスキーや焼酎の水割りに使うとまろやかな味になるそうです。メープルサップを40分の1程まで煮詰めたものがメープルシロップ「楓の雫」です。

メープルシロップ「楓の雫」。他に「メープルビール」がある。すべて限定品で大量生産はしない。

 メープルシロップはカナダの特産品として有名で、なぜ、金山でメープルシロップなのかと言われたこともあったそうです。きっかけは、哲学者の内山節さんがご主人に言った一言「木糖でコーヒーが飲めたらいいね」。26年も前のこと、日本にはまだメープルシュガーがなかったそうで、資料を集め、試行錯誤し完成しました。カナダ産のものよりもカルシウムが多く含まれているそうです。

メープルサップ採取。いつまで出すかは木自ら決める。旧暦2月、今の3月がシーズン。

 メープルサップはイタヤカエデの木に3cmほどの穴を開けて、そこにポリタンクを設置し、毎日回収してきます。ポッタポッタと1秒に一滴ほど出てくる樹液は、本当に涙のよう。木にとっては命の水とも言えるので、木への負担を考え開ける穴は、1本の木に1つだけ。木にいただける分だけで作っています。

 

次のステップヘ

 平成10年より、杉沢地区の集落ぐるみで体験と宿泊を行っていた「共生のむら すぎさわ」は、平成24年で閉じました。これまでは、杉沢地区をメインに体験メニューを提供してきたものをもっと広く金山町全体を見てもらえるような方向へと進んでいます。

 最近は、仙台から1年に7回ほど通って、米作りをしたり、空き家に移り住んだ人と一緒に語り合ったりと、次の段階へと向かっています。

 それでも、観光業としての受け入れではなく、あくまでも自分たちの暮らしを体験してもらうということは変わりません。宿泊スタイルも同様で、栗田さんのログハウスに宿泊する場合、寝具と朝食のみ提供するB&B(ベットとブレックファースト)。夕食は、暮らし考房以外にも金山町内に足を運んでもらおうと、町内の飲食店を紹介します。町内にあるホテル「シェーネスハイム金山」とも連携。ホテル宿泊者が、暮らし考房で体験する際、バスで送迎してくれます。

 自然からいただくものに感謝しながら暮らすこと。キエ子さんの笑顔が何よりもここの暮らしの楽しさ、豊かさを伝えてくれました。

 雪が溶けて杉沢にも遅い春が訪れます。そして、新緑の初夏、これから杉沢は美しい季節です。テラスからの眺めは最高です。体験したり、栗田さんご夫妻とお話したり、少しゆっくりと自然の中で自分と向き合うのもいいかもしれません。

 

●体験メニュー
・藍染(7月~10月)・草木染(通年)・石釜ピザ焼き(5月~11月)
・チェンソークラフト(5月~11月)・メープルサップ採取(3月)
●宿泊 ログハウス
・B&B(ベットと朝食のみ)1泊朝食付 3,500円

 

取材協力
暮らし考房 山形県最上郡金山町大字中田字杉沢 298 TEL/FAX: 0233-52-7132
予約、問合せはTELもしくはFAXにて
シェーネスハイム金山
山形県最上郡金山町大字有屋1400 TEL: 0233-52-7781

 

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  • 平成25年3月15日公開

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