もってのほか&悪戸いも

いま、山形から・・・ やまがた伝統野菜 村山地域 「もってのほか&悪戸いも」

 150種類以上が確認されている、山形県の伝統野菜(在来作物)。県都のある村山地域から、秋を代表する2つの作物をご紹介します。食用ぎくの「もってのほか」と、河原の芋煮会にもってこいの里芋「悪戸あくといも」です。

山形県の秋の味覚 もってのほか
食感のヒミツは花びら一枚一枚のかたち。
もってのほか畑では雨天時ビニールをかけて品質を高める。

 「食べる菊」というと、全国的には刺身のつまに用いられる、黄色い小菊を連想する方が多いかもしれませんが、東北地方ではもともと菊の花びらを食べる習慣がありました。県内では、民家の庭先や畑で栽培する方も多く、山形県民にとって親しみ深い作物のひとつです。

  「延命楽」とも呼ばれる紫色の食用ぎくは、山形では「もってのほか」という愛称で広く知られています。名前の由来は「天皇の御紋の菊の花を食べるのはもってのほか」、「食べてみたらもってのほか旨かった」など、いろいろで、定説はありません。しゃきしゃきした歯ごたえと、ほのかな香りがあり、秋の色として好まれ、食卓を明るく豊かに彩ってくれます。

「もってのほか」には、戦前から栽培されているとも言われる「早生もって」と「本もって」のほか、多くの種類があります。出荷がはじまるのは10月ごろから。一枚の花びらがストローのような管弁になっていて、しゃきしゃきとした食感があるのはこのためです。村山地域では伝統野菜として、生産振興と活用促進を支援しています。

JAさがえ西村山食用ぎく部 部会長 氏家志信さん。

「もってのほか」栽培に欠かせないのが専用の屋根。父親の代から50年以上、栽培に取り組む、氏家志信うじいえしのぶさんによると「朝夕にシェードをかけ、光を調節する短日処理で開花を早めたり、雨に濡れると病気になりやすいため、雨天時に透明のビニールをかけ品質を確保するなど、手間ひまがかかっている」のだそうです。

氏家さんたちは、もっと多くの人に食べてもらいたいと、新しい食べ方を教わったり、菊を食べる習慣がない東京、大宮、京都で試食会等を開いています。「これまではおひたしや酢の物で食べていましたが、茹でてドレッシングで食べるのが好評です。青しそドレッシングとごまダレをあわせて食べるのも美味しい」と教えてくれました。

ねっとりする旨い品種 悪戸いも
悪戸いもの栽培方法について話す向田孝一さん。

山形市の西部に位置し、須川(最上川系)の西岸に位置する悪戸地区。須川の扇状地で、かつては氾濫などの水害に悩まされたことから、珍しい地名が付いています。この地名を冠した「悪戸いも」は肥沃な地で古くから栽培されてきた里芋の一種。

3月末から種芋を選別し、ポットに入れ、お湯を地中にまわした床暖房で30日以上育苗し、畑に移します。昔は、親芋の周囲にできる小芋からの芽(子頭)が伸びてくると、それを親芋のまわりに巻き土を寄せ、成長を止めるという栽培方法でしたが、現在は子芋からの芽を抑制する「高うねマルチ」という方法が採用されています。水を好むので、パイプラインから水を取り、うねの間を水で満たしてやります。「昔ほど手間はかからないけれど、明渠(堀)などの対策がないとねずみにやられてしまうのは悩み」と語るのは生産者の向田孝一むかいだこういちさん。

小芋の部分に根が少ない。

  「ここら辺で採れる里芋は全国でも1、2位を争うほど美味しい。悪戸いもは繊維の質が細かく、やわらか。小芋は根が少ないため硬い部分が少なく、栄養が行き届いてねばりが強く美味しい」のだとか。

茎の部分が枯れ始めると、芋が熟成してくる。

向田家では、このねっとりとした悪戸いもを、芋煮はもちろん、カレーやシチューにして食べているそうです。平成23年は、レトルト芋煮の開発にも取り組み、より多くの方に「悪戸いも」を口にしてもらおうと意欲的です。「これまで捨てられることもあった親芋も、独特の食感や舌触りがあって、コロッケにするとすごくおいしいですよ」と新しい食べ方も教えてくれました。

 

山形の食材で山形の食を発信する
Cafe&Dining990 コック長、佐藤善太郎さん

山形に伝わる伝統野菜をもっと山形で食べてもらいたい。そんな思いで、伝統野菜を観光資源として提供する店があります。山形市十日町の紅の蔵では、JAの直売所で伝統野菜が購入できる他、そば屋と洋食のお店で毎月10~20日、伝統野菜を中心とした期間限定メニューを食べることができます。

カフェ990クックレイの料理長・佐藤善太郎さんにこれまで提供してきた、「もってのほか」と「悪戸いも」のメニューを作っていただきました。

山形もって菊と木の子きのことリンゴのソテー

○山形もって菊と木の子きのことリンゴのソテー
(平成23年10月限定メニュー)

山形産の秋の香りを楽しんでもらおうと、相性の良い3品を白ワインヴィネガーと粒マスタードで風味付け。もってのほかは煮込んでしまうと、色が無くなってしまうので気を使ってたそうですが、今はハーブの一種と考えているそうです。

○悪戸いも990パイ
(平成22年12月限定メニュー、食材の準備ができれば、要予約で提供可能。平成23年11月には悪戸いもの別メニューを予定。)

悪戸いも990パイ

自家製パイ生地に、ピューレ状にした悪戸いもと生クリームをあわせて練り、外側に土手をつくります。中にはミートソースを入れ、パイ生地でとじています。

紅花商人だった長谷川家の蔵屋敷のモダンなタイルを活かした店内。

伝統野菜を中心とした限定メニューは、平成22年8月から毎月1品を提供しており、「おかひじきの冷製パスタ」や「つるむらさきと生ハムのボンゴレ」、「あけびのピザ」など、個性的なメニューが生まれています。「この野菜はこの料理という既成概念を壊しつつ、ふたつとないメニューを提供し、お客様に来ていただければうれしいですね」と佐藤さんは意欲を燃やしています。

農家や地域の人々に守られてきた伝統野菜。私たちがその作物の良さを知り、購入し、料理し、味わって、その魅力を伝えていく。私たちの身近にあるものを磨いて、大事にして誇りにすれば、地域も私たち自身も、もっともっと輝くことができそうです。

 

お問合わせ・取材協力

○県村山総合支庁産業経済企画課 TEL 023-621-8432 (村山特産野菜)・(村山旬の市

○もってのほかの問い合わせ先:JAさがえ西村山 TEL 0237-86-8186
山形まるごと館紅の蔵 Cafe&Dining990(クックレイ)TEL 023-679-5103



 

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