「すまいる」スペシャルインタビュー
藤沢周平が生まれ育ったことや、美味しい“だだちゃ”豆の産地として全国に名を知られる、山形県鶴岡市。その鶴岡市でいま、ちょっとした評判になっているお店があります。築100年以上の古民家をそのまま利用して、民宿と食事処の二つを展開するというユニークなお店。そのどちらにも都会からのお客様が多数訪れて、ゆったりとリフレッシュして帰っていくといいます。切り盛りするのは、この家で生まれ育った女将の小野寺美佐子さん。今回はその小野寺さんに、お店のことや訪れる人々のこと、そして山形の魅力などを、優しい庄内弁を交えて語っていただきました。

1953年、鶴岡市福田生まれ。地元の高校を卒業後、家業を継いで就農。1985年に有機栽培の農作物を宅配する「たべものを考える野菜の会」をスタート。2002年には自宅を改築し農家民宿「母家」を開業。'05年には野菜料理の店「菜ぁ」を開業する。
「母家」と「菜ぁ」は、山形県鶴岡市福田甲41
電話(0235)25-8694 «ウェブサイトはこちら»
「母家」と「菜ぁ」は、山形県鶴岡市福田甲41
電話(0235)25-8694 «ウェブサイトはこちら»
古民家を利用して、民宿と食事処をやられているということで、ユニークな展開ですね。
- 小野寺さん
- 私自身、民宿と食事処と2つやろうなんて思ってなかったのですが、いろいろやっているうちに、いつの間にかこうなってました(笑)。
どういう経緯で民宿と食事処を始められたのですか?
- 小野寺さん
- 最初は私、普通の農家だったんです。私はこの家に生まれ育って、四女ですけども家を継ぐことになって、他にもやりたいことあったんですが就農して、ずっと米作りをやってきました。でも結婚して子どもが生まれた頃から、子どもたちを元気に丈夫に育てるにはどうしたらいいだろうって考えるようになりまして、それで、減反で農地も余っていたので野菜の有機栽培を始めたんです。丈夫な体はまず食べ物からと思いましてのぅ(笑)。そして何年かしたら、有機野菜を分けてくれないかという方がけっこう出てきたんです。それで始めたのが「たべものを考える野菜の会」。これは会員制で“野菜の宅配”をする会なんです。会はいまも続いていて20年ちょっとになります。

民宿として使っている部屋は4室。築100年以上経った家は天井が高く、開放感がいっぱい!
民宿と食事処はまだずっと後になるわけですね?
- 小野寺さん
- そうですね、先に始めたのは民宿なんですけども、まず、今申し上げた「野菜の会」の会員さんが増えて交流も深まってくるにつれて、会員さんの中からウチに遊びに来たいとか泊まりに来たいという声がけっこう出てきたんです。またちょうどその頃に、山形県で「グリーンツーリズム」が提唱され出してきて、私もそういう会合に出席してお話を聞く機会があったんですけども、農家を民宿にして都会の人を受け入れる「農家民宿」というのがあるのを知ったんです。それで私もできそう、やってみようって思って、『農家の宿 母家』を始めたんですね。
思い切りがいいですね(笑)。
- 小野寺さん
- 本当にそう(笑)。それでね、何年か民宿をやっているうちに、お客様に「料理が美味しい」って誉めていただくことが多くなってきてね、私自身も野菜のいろいろな食べ方を他の人にも知ってもらいたい気持ちがあったもので、今度は「じゃあ料理のお店をやってみよう」って、『やさいの荘の家庭料理 菜ぁ』を始めてしまったんです。長くなりましたけど、これまでの道のりは、そんな次第ですのぅ(笑)。

自ら育てた有機野菜でつくる「菜ぁ」のランチ。美味しいだけでなく、その優しい味わいに心まで癒されます。
いえいえ、経緯がよくわかりました(笑)。それで、特に「母家」の方は都会からお泊まりのお客様が多くて、いろいろ農業体験などされていると聞きました。具体的にどんなふうにされているのですか?
- 小野寺さん
- たしかに都会からのお客様は多いですのぅ。何度か雑誌に紹介されたこともありまして、そういうのを読んで来られる方が多いです。
でも農業体験は、特にメニューに入れてやっているわけではなく、私やスタッフが余裕のある時にだけお受けしているんです。やることはいろいろで、だだちゃ豆の収穫だったり、豆の選別や袋詰めだったり。料理を習いたいという人には、ちょっと手伝いをやってもらうこともありますのぅ。役所や観光関係の方からも、農業体験をもっとやってほしいとよくいわれますが、余裕がなくて難しいです。それに私思うんですが、グリーンツーリズム=「農業体験」ではなくて、この家の一室から庄内平野の風景を眺めて静かな時間を過ごしたり、あるいはちょっとその辺を散歩して田舎の風に触れたりとか、そういうのもグリーンツーリズムじゃないかなって思うんです。ある時、お客様に言われたことがあるんですよ。「いままでは旅行というと観光名所見たり何したり、ガツガツ旅行してたのが、ここではゆっくりできる」って。だからここでは、田舎の風景や空気に触れたり、風の匂い、草の匂い、蝉や鳥の鳴き声とか、そんなのに身を委ねてゆったりした時間を過ごしてもらうのもいいんじゃないかなって思うんです。
そうですね。特に何かをしなくても、ここは土地の空気に触れているだけでも気持ちいい感じがします。
- 小野寺さん
- 別にここだけでなく、そういうのは山形のどこに行っても感じることができると思うんです。だから山形に来られたらね、観光名所をまわるだけでなく、自然の風景だとか、田舎の空気だとか、ゆったりと楽しんでもらえたらなぁと思うんです。いい出会いも、きっとあるはずです。

