おらほの自慢「だし」



「だし?!」出汁(だし)でも山車(だし)でもありません。今回、皆さんに紹介するのは山形の郷土料理の「だし」です。
胡瓜(きゅうり)、茄子(なす)、茗荷(みょうが)、紫蘇(しそ)、葱(ねぎ)などの夏野菜を全部みじん切りにして、醤油をかけて少し時間をおけば、山形の郷土料理「だし」の出来上がりです。作り方はシンプルですが、香味野菜が入っているためか味は鮮烈です。ご飯にかけて食べるのが一般的ですが、蕎麦(そば)にのせたり、冷奴にのせたり、もちろんそのままおかずの一品にもできます。
「だし」には、決まりきった作り方はなく、その地域、家庭、季節によって様々なバリエーションがあります。"なっとう昆布"や"オクラ"を入れてネバネバ感を出したもの、油揚げを入れたもの、唐辛子を加えて辛くしたものなどバラエティに富んでおり、それぞれ個性的です。

発祥や名前の由来については諸説があり、正確なことはわかっていません。また、村山、最上、置賜地域ではよく食べられますが、庄内地域ではあまり食べられていないようです。
「だし」は、梅雨から夏にかけての農繁期のスピード料理として重宝されてきました。またその清涼な食感は、暑い時期、食欲のない方にはもってこいで、栄養価にも優れている一品です。
それでは、それぞれの家庭で伝えられてきた「だし」の一例を紹介します。


奥山家では夏になると週に2、3回は「だし」が食卓に並びます。畑仕事から戻った時、おかずがちょっと足りない時など、あるものでパッとつくれるのが便利。とれたての新鮮な野菜を使うのがおいしさの秘訣です。材料は、茄子、胡瓜、茗荷、青紫蘇、葱など。畑にあるものを使うため、その季節によって少々味は変わります。これらをみじん切りにして、醤油をかけて出来上がりです。
奥山さんの「だし」は、茗荷と紫蘇の味がきいていて、細かく刻まれた具材は、新鮮でしゃきしゃき。野菜のおいしさがそのまま活かされていて、まさに旬の味です。


古頭さんの「だし」の特徴はぬるぬるネバネバです。材料は、茄子、胡瓜、茗荷、青紫蘇、葱、玉葱、生姜、オクラ、そして"なっとう昆布"。"なっとう昆布"とは乾燥させた昆布を小さく刻んだもので、少量の水を加えて少しの間おくとヌルッとした粘りが出てきます。みじん切りにした野菜を、水につけてアク抜きし、水を切ってから"なっとう昆布"、醤油、出汁を加えて出来上がりです。

古頭さんの「だし」は生姜の味がさわやかで、昆布の風味と粘りで全体的にまろやかな味に仕上がっています。古頭さんは、おかずとしてそのまま食べることが多いそうですが、ご飯がすすむこと受け合いです。

「だし」は、材料により、特に"なっとう昆布"が入るかどうかでだいぶ味が変わります。ちなみに私の生家は"なっとう昆布"を入れない派。私は、今回"なっとう昆布"入りの「だし」を初めていただきましたが、その美味しさは驚きでした。

山形県民がこよなく愛する家庭料理の「だし」。作り方は簡単です。一度、試してみてはいかがでしょうか。これからの暑い季節にはもってこいの一品です。