おらほの自慢【米沢牛】


 

 
画像いま、山形から・・・山形県メールマガジン第15号
画像おらほの自慢 2003年3月7日第15号
山形には、豊かな自然と人情が育んだ自慢の味がある。今や全国に名高い「米沢牛」。
先人たちの長い歴史の中で培った肥育技術と米沢盆地の清らかな水、寒暖差激しい自然環境が最高の霜降りをつくりあげる。
しっとりとろける柔らかさ、口の中にひろがる甘み、まろやかさ・・私たちに間違いなく至福の時をもたらしてくれる逸品なのだ。
 画像米沢牛よねざわぎゅう

画像良質牛の産地山形
画像米沢牛すき焼きの画像
 高品質の肉の産地としても名高い山形県。なぜ、おいしい肉ができるのか。その背景には、寒暖の差が激しい盆地性の気候や肥沃な土壌、豊かな水資源といった自然環境がある。牛が良く育つ条件は米や果物、野菜をおいしくする条件と同じなのだ。
画像米沢牛放牧風景
この山形の大自然が良質の牛を育てる。

こうして、飯豊牛、西川牛、東根牛といった良質の肉牛が作り出され、統一した品質、規格によるブランド化を保つため、県内産肉牛を総称「山形牛」と命名するに至る。出荷には「12ヶ月以上肥育した黒毛和種」という基準を設け、流通面においても徹底した管理を行っている。今回は総称山形牛の中から、全国的に高い評価を得ている「米沢牛」を紹介しよう。
  
画像名声のはじまり
 県産牛の歴史も事実、米沢から始まる。時は明治4年、旧上杉藩校興譲館の英語教師として招かれた英国人のチャールズ・ヘンリー・ダラス氏は、滞在中、横浜から連れてきたコックの万吉に牛肉料理を作らせた。そのおいしさにいたく感激し、万吉に米沢で最初の牛肉店を開業させる。任期を終えて横浜に帰る際には、お土産として牛一頭を持ち帰ったというから驚きである。これを食べた外国人居留地の仲間もあまりのおいしさに驚嘆し、評判となり、これが米沢牛の名を世に知らしめるきっかけとなったのだそうだ。以来、評判が評判を呼び、今では松阪牛や神戸牛と並ぶブランド牛として高い名声を誇っている。
画像皇室ご用達記念写真
登起波牛肉店2代目店主が皇室ご用達記念に大正14年に撮影した写真。
  
画像登起波牛肉店2階料理店店内の画像
登起波牛肉店2階にある料理店店内。特にすき焼きが自慢だそうだ。「米沢牛のれん会」ののれんは本場の米沢牛を取り扱うお店の共通マーク。市内の代表的なお店18件で構成されている。

画像米沢牛専門店のこだわり
画像登起波牛肉店店内の様子
明治27年創業の登起波牛肉店。5代目の尾崎社長は8年前先代である父が亡くなり、23歳の若さにして後継者に。大学での畜産の研究を生かしながら米沢牛の味にこだわり続ける。
 地元米沢では、米沢牛の専門店が多い。その中の一つで明治時代に創業し、代々米沢牛の美味を伝え続けてきた「登起波(ときわ)牛肉店」を訪ねた。大正時代には皇室御用達の名誉ある歴史をもつ老舗である。1階が販売店で2階が米沢牛専門料理店となっている。このような効率のよい肉屋兼料理店は、米沢市内だけでも10軒以上はあるそうだ。5代目の尾崎社長は「うちは牛1頭をまるごと、厳選して買っていますから味には自信があります」と話す。しかも肉質が柔らかいメス牛で生後1000日以上飼育されたものを厳選して購入しているそうだ。質の良いもので勝負!なのだ。まさに最高の米沢牛を追い求める姿勢に老舗を受け継ぐ者のこだわりを感じた。
画像米沢牛の画像
 
画像おいしさの秘訣
 ところで、牛肉の産地が全国に点在する中で、なぜ米沢牛がおいしいのか。米沢牛の生産者で組織する米沢牛銘柄推進連絡協議会の佐藤事務局長に話を伺うと、「米沢牛の特長は融点すなわち脂の溶ける温度が低いことにあります。ただ低すぎてもだれてしまうのでその調整が難しいのです」。まろやかにとろけ、なおかつ口の中に脂が残らない理由はそこにあるようだ。 とろける柔らかさ、肉本来の風味、甘さ・・米沢牛の表現には語りつくせないものがあるが、こうしたおいしい肉はどのように生み出されるのか、生産農家を訪ねてみた。
画像牛舎と伊藤さんの画像
牛に餌を与える伊藤さん。牛たちの穏やかな表情と優しいまなざしに注目。
 
画像愛情をこめた肥育
 優しい目つきと穏やかな表情、牛舎の中でのんびりゆったり過ごす牛たち。米沢市笹野で肥育農家を営み、肉用牛振興部会長、米沢牛出荷組合長を務める伊藤精司さんが丹精込めて育てている牛だ。現在47頭の牛を肥育しているが、米沢牛の肥育農家はたいてい目が届く40頭前後が多いそうだ。血統書付きの生後10ヶ月の仔牛を導入し、約2年間肥育して出荷する。血統5割、餌3割、管理2割といわれるように、仔牛を見極める目も大きく影響する。長年の経験と緻密な研究がものをいう。また餌によっても肉質が違ってくる。「良い牛を育てるには、厳選した餌と自然環境、おいしい水に加え、ストレスをためないための配慮が大切です」と伊藤さんは話す。

 餌は、地元の稲わらに加え、大麦、大豆、トウモロコシ、フスマなどを厳選してブレンド、最近は遺伝子組み換えのないものを調達している。より安全なものを目指し、米沢牛出荷組合が取り組んでいる動きでもある。また、ブラッシングで毛並みを整え、暑くなく寒くなく、牛舎の換気に配慮しながら、「牛も人間と同じ。常に仲間といるとストレスがたまるはず」と伊藤さんは一頭ごとに柵を設け、時には話しかけながら愛情を込めて育てている。伊藤さんの穏やかな優しい語りかけがきっと牛にも伝わっているに違いない。
画像枝肉セリ市場の画像
セリは無線システムで行われ、1円ごとに上がる値を見ながらボタンを押す仕組み。極上の肉はたちまち高値になる。

画像枝肉セリ市場
 こうして丁寧に育てられた牛は、枝肉セリ市場で評価が下される。置賜畜産公社で行われる米沢牛枝肉市場では、生産者が見守る中、購買権を持つ大手卸業者や老舗の牛肉店などが、詳細な格付データと現物の肉質の状態を見ながら値をつけていく。リストには牛の生産者名、肥育日数、重量などのほか血統として「祖母の父」の名前まで載っていることにも驚いた。もちろん購買者には生産証明書や米沢牛証明書などのお墨付きだ。
画像米沢牛のラベル画像
この米沢牛ラベルが信頼の証。

画像顔の見える生産体制
画像耳標のアップ画像
トレーサビリティシステム導入のため、牛の耳に個体識別番号をつけて管理している。
 また、置賜畜産公社では、農水省の「国産牛肉生産情報提供モデル事業」として個体識別番号を牛の耳に装着し、小売店でのパック販売に至るまで同番号で一元的に管理するトレーサビリティシステムを全国に先駆けて試験導入した。現在、小売店等で番号を読み取る機器の整備を進めているが、近い将来インターネットで検索すれば、牛の経歴や生産者名などが確認できるようになる。こうした顔の見える生産体制づくりへの取り組みは「米沢牛」の信頼性を高め、その名を確実なものとしていくのだ。

 より安全、安心なものが求められる現在、産地の明確な牛肉が新たな人気を呼びおこしている。米沢牛の年間出荷数はわずか2000頭。最高のものを守り続ける関係者それぞれの努力を垣間見て、米沢牛のおいしい本当の理由に近づいたような気がした。この米沢牛の美味は永遠に受け継がれ、いつまでも私たちに夢と幸せを与えてくれるであろう。
 


 



 

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