剱持猛雄

大工

剱持猛雄の仕事。
番匠・剱持工務店 棟梁(鶴岡市)
H29年度「現代の名工」受賞

伝統的な建築技術と木に込められた地材地建の家づくり。
「お前はどこに行きたいのか?丈夫で長くもってくれよ」
木に語り掛ける職人の想い。


※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。

剱持猛雄 「私は決して名工や匠ではないですよ(笑)。地元にある自然の木を使って、ただ私なりに普通の家を建ててきただけです」と剱持さん。
日本古来の建築文化の構造技術である伝統木構造の家づくりを推進する大工職人の一人である。

基礎は石場建て、構造材は地元の無垢材、継手・仕口にはできるだけ金物類を少なくし、壁の強度は筋違いではなく貫を多用する伝統的な家づくりにこだわっている。
現在の建築基準法を満たしながら、現行の中に、いかに伝統に近いものを組み入れられるかを考え、多くの建物を手掛けてきた。

高校を卒業後、東京の建設会社に勤務するが、進学して構造計算を学びたいという思いから退職。
帰省し両親に相談したが、進学ではなく大工の仕事を勧められ職人の世界を志した。
大工職人として多くの住宅を建築し、経験を積む中、古い木造建築物の解体や修復に携わる機会も多々にあった。
建物を解体しているうちに、昔の大工職人の手によって仕上げられた仕口や継手などを見て、その素晴らしさに気付いた。

「木の特徴やクセが構造に生かされており、昔の家は丈夫で長持ちする。それこそが大工の技」。先人の知恵と技術を追求するきっかけになった。
「木は人間と同じで一本一本に個性がある。曲った木をどこに使うか、どう組み込むか、工夫次第では丈夫で立派な住宅は完成する。職人の腕の見せ所になってくる」。

これまで10人以上の弟子を育ててきた剱持さん。弟子の中には息子の大輔さんもいる。大輔さんは父である剱持さんの意思を受け継ぎ、親子は2人3脚で伝統木構造と地材地建にこだわり続ける。 

また、剱持さんは伝統技術を広めるNPO法人 伝統木構造の会のメンバーの一人としても活躍している。セミナーや講習会、実技指導などを展開し、全国各地を飛び回る日々を送っている。道具を使いこなし、木の特徴を見極め、適材適所に配置するといった本来持つ職人の姿を剱持さんは身を以て示している。熟練職人の挑戦はまだまだ続く。