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更新日:2020年9月28日
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(平成28年6月3日掲載)
1300年前から関所があったという鼠ヶ関(ねずがせき)。奥州三大古関のひとつであり、源義経ゆかりの地といわれています。この街の歴史や観光名所とともに、イカや紅エビなど、季節を通じて豊かな海の幸に恵まれる港町としての魅力をご紹介します。
蝦夷防備のための最前線基地として鼠ヶ関に関所が設けられたのは1300年前。国道7号沿いに位置する「近世念珠関址(きんせねんじゅせきあと)」は、荘内藩主として酒井氏が入部した1622年以後に移転・整備されたもので、古くは山形と新潟の県境付近に関所があったことが発掘調査で確認されています。
義経上陸の地碑
近世念珠関址
この念珠関は、「白河関」、「勿来関(なこそのせき)」と並び、「奥州三大古関」のひとつとされています。一説によれば、1186年、兄の源頼朝に追われた源義経一行は、義経が青春時代を過ごした奥州平泉をめざし、京の都から琵琶湖を渡り、越前、越後と日本海を北上、念珠関に入ったといわれ、海岸近くには直木賞作家で長編小説『源義経』の著者・故村上元三氏の筆による「義経上陸の地」碑が建てられています。
「歌舞伎の名場面『勧進帳』の舞台となったのは一般には現在の石川県の安宅関(あたかのせき)と伝えられていますが、鼠ヶ関には義経から伝えられた矢立て、扇、般若心経が残っているとの言い伝えもあり、関守の富樫左衛門と同じ富樫姓が多いことなどから、『勧進帳』の関所は実は念珠関ではないか、ともいわれているんですよ」と地元あつみ観光協会の阿部麻由子さんが「秘密」を語ってくれました。
白紙の巻き物を広げ、主君義経のため、あたかも勧進帳であるかのように朗々と読み上げる弁慶。その嘘を見破りながらも、一行を逃がしてやる富樫・・・。数百年の昔、そんなドラマがこの場所で繰り広げられたかもしれない、と歴史浪漫に胸がふくらみます。
※「勧進帳」とは、寺院の堂塔の建立などに要する金品・材料の寄付募集の趣意を記し、巻物などにしたもの。僧や山伏が民衆から寄付を集める時に読み聞かせる。
生まれも育ちも鶴岡市(旧 温海町)という、観光協会の阿部麻由子さん
観光協会の阿部さんが「ぜひ訪れて欲しい」と教えてくれたのが「念珠の松庭園」。一本の松が、まるでこれから天に昇る龍のように、大きく横へと伸びています。これは約400年前に元村上旅館の佐藤茂右エ門が盆栽の松を庭に地植えし、代々庭師を入れて丹精込めて手入れをしてきたという黒松で、山形県天然記念物に指定されています。その周囲には世界的にも有名な日本庭園の造園家・中島健氏が設計した風情ある美しい庭園がつくられ、念珠の松を彩っています。県外からも庭木や植物好きな方が訪れるのも納得です。
昇り龍を想わせる念珠の松
夕陽に映える弁天島
また鼠ヶ関海岸にある弁天島には遊歩道が整備され、陸の先端にある灯台まで歩いていけるようになっており、釣りや夕陽のスポットとしても人気があります。たくさんのプレジャーボートやヨットなどが停泊する鼠ヶ関マリーナ、夏は海水浴客でにぎわうマリンパークねずがせきもあり、さわやかな潮風の中を散策したり、海で遊んだりと、大人から子どもまでが楽しく過ごすことができます。
家族連れなどでにぎわうマリンパークねずがせき
山形県漁業協同組合念珠関総括支所長 佐藤修さん。
鼠ヶ関のもうひとつの魅力は紅エビをはじめ、ハタハタやサワラ、ズワイガニ、寒ダラなど、四季を通じて獲れるさまざまな魚介類。今年9月に開催される「全国豊かな海づくり大会」の海上歓迎・放流行事会場にも選ばれている鼠ヶ関で、豊かな水産資源を守るためどのような取組がされているのか、山形県漁業協同組合念珠関総括支所長・佐藤修さんに伺いました。
「底びき網やはえ縄などの漁法が行われている鼠ヶ関では、水産資源をとりすぎないよう、土曜日を競売のない休市日(きゅういちび)にし、漁をしない日を設けています。
また、魚食普及のため、子どもや一般の方に新鮮な魚介類に親しんでもらえる様々なイベントを行っており、イベントの前には、河口や漁港などの大掃除をしています。大雨が降ると大きな木の根が流れついたり、海からの漂流ゴミがあったりと、自分たちが気を付けていても、港では清掃作業は必須なのです。さらに平成26年から森・川・海の自然の循環について理解を深めるため『魚の森づくり活動』がはじまり、林業と漁業の関係者がいっしょになり広葉樹の植林なども行っています」。
人気の漁船クルージング
多数のリピーターが訪れる様々なイベントがあるのも鼠ヶ関の特徴です。5月の大漁旗フェスティバルは「鮮魚販売や子どもの魚のつかみ取りで一日中楽しめる」と、県内外からのお客さんでにぎわいます。7月中旬から8月中旬までは、底ひき漁船をつかった「鼠ヶ関漁船クルージング」で船長の話を聞きながら、漁師気分を体験できます。9月と10月に開催される「とれたて!お魚市」は紅エビとズワイガニなどの100%地元で水揚げされた魚介類をさまざまな食べ方で、しかもお値打ちで味わえるとあって、毎回大盛況です。
そして6月のおすすめはイカまつり。生イカやイカの一夜干し、イカ焼き、イカ汁、イカ飯の販売。その他、ユニークなイカ墨を使った「イカ墨書道」、スルメイカをラケットにした「スルメイカ卓球」、イカの口であるトンビを口にくわえて飛ばす「イカのトンビ飛ばし世界大会」、釣りや一夜干し作り体験、海辺でのシーカヤック体験など、イベント盛りだくさんです。
思い切り海で遊んで、おいしい魚介類をたらふく味わう。自然や歴史にふれ、ゆっくりと民宿に泊まり疲れをいやす。歴史と港の街・鼠ヶ関でこんなぜいたくな休日を過ごしてみませんか?
イカまつりでの出番を待つ?一夜干し
平成28年6月18日(土曜日)
場所:鼠ヶ関 弁天島前イベント広場