更新日:2020年9月28日

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白布温泉

いま、山形から・・・ 温泉王国やまがた 吾妻の山懐(ふところ)に抱かれた開湯700年の温泉地 白布(しらぶ)温泉(米沢市)(JPG:215KB)

(平成28年12月2日掲載)

吾妻連峰の中腹、標高850メートルに位置する白布温泉。蔵王温泉(山形市)、高湯温泉(福島市)と並び「奥羽三高湯」と称され、古くからの湯治場として知られています。秋の終わりにはひと足早く雪をいただき、4月頃まで白さが残る山里の温泉地を紹介します。

はじまりは一羽の白鷹から

米沢市街地から南方面へ車を走らせること30分。天元台スキー場のほど近くにひっそりと佇む白布温泉は、開湯700年を迎えた歴史のある温泉地です。

「開湯は1312年。温泉の起源には諸説あるのですが、一説には、ここから車で20分ほどの場所にある笹野観音の和尚さまが体調を崩したとき、その子供たちがお寺に願掛けをしたところ、夢の中で山中のとある場所に行くようにお告げがあったそうです。実際にお告げがあった場所を訪れてみると、傷ついた白い斑点模様のある一羽の鷹が温泉に浸かり傷を癒しており、そのお湯に和尚さまが入るとたちまち元気になったそうです。温泉は、『白斑鷹湯(しらふたかゆ)』と名付けられ、時代を経て今の「白布温泉」の名称になったといいます。そのほかに、『アイヌ語で霧氷のできる場所をシラブと呼ぶから』という説や、『源泉から流れていくときに、湯の花がつながり一枚の白い布のように見えるから』という説もあります」と教えてくれたのは、中屋別館不動閣の遠藤秀平さんです。

遠藤秀平さん(JPG:68KB)

「2011年に7つ目のお地蔵さまを納めたんですよ」と白布温泉観光協会会長を務める遠藤秀平さん。

お地蔵さまたち(JPG:156KB)

天元台スキー場ロープウェイ湯元駅近くから少し降りた場所にひっそりと祀られているお地蔵さまたち。冬場は近くに立ち入ることができません。

白布温泉では、開湯の日と伝えられる毎年6月12日にお神酒の代わりに温泉をお供えするお祭り(神事)が行われており、源泉の近くに100年に一尊(体)のお地蔵さまを納める習わしが受け継がれています。ほかにも、安土桃山時代には上杉家の重臣・直江兼続がこの地で火縄銃を製造していたという文書が残っているなど、開湯700年という長い歴史を随所に感じる温泉地です。

たっぷりと自然に湧き出る温泉

白布温泉は、1分間に1,300~1,500リットルものお湯が自然湧出するという、豊富な湯量が特徴です。源泉は60℃前後と比較的熱く、そのままでは入浴できないので、それぞれの旅館で湯加減の調整をしています。

不動閣のオリンピック風呂(JPG:97KB)

最上川の源流である渓谷が望める、中屋別館 不動閣のオリンピック風呂。男女合わせて長さは33m。

西屋旅館のお風呂(JPG:73KB)

立ち込める湯気が幻想的な雰囲気の西屋旅館のお風呂。

「白布温泉は熱めですので長くつかることはできませんが、入浴後、頭がすっきりします。昔は『頭のよくなる湯』といわれていたそうです。開湯以来700年を経て自然湧出し続けている温泉というのは珍しいと思います。温泉のお湯は、おそらく何百年も前に降った雨水が地中深く浸み込み、いろいろな成分を取り込みながら、ゆっくりと地表へと上がってきているんです。長い歴史と自然の恵みがたっぷりつまったお湯を楽しんでもらえればうれしいですね。」と遠藤さん。

白布温泉の旅館は、渓谷の雄大な自然を眺められる全長33メートルの浴槽をもつ中屋別館 不動閣や、豊富な湯量を活かした湯滝風呂で知られる西屋、四季折々の景色が楽しめる露天風呂のある東屋など、それぞれ湯船に特徴があります。宿泊以外に日帰り入浴が可能で気軽に利用できますので(時間・価格は旅館によって異なりますので要お問い合わせ)、入り比べてみるのもいいですね。

西屋旅館(JPG:46KB)

源泉を豪快に浴びることができる湯滝が自慢の西屋旅館。

重厚な茅葺屋根の母屋が残る西屋旅館

開湯と同時期の創業と言われ、趣のある茅葺屋根が人気の旅館が西屋旅館です。

「茅葺屋根の建物は、文政12(1829)年頃に建てられた母屋で、平成23年に米沢市景観重要建造物第一号に指定されました。平成12年までは、うちのような茅葺屋根の旅館が3軒並んでいたのですが、火災があり、現在、茅葺きの建物が残っているのは、この西屋旅館のみとなっています」と西屋旅館の遠藤友紀雄さん。一人の職人が東屋、西屋、中屋、3軒の茅葺屋根を修繕していたのだそう。年々、材料となる萱も減り、その職人も引退されてしまったため、現在は県外の職人にお願いするなど、維持するためには苦労が絶えないそうですが「茅葺屋根の旅館はここ1軒しか残っていないから、なんとか残していかなければ」と遠藤さんは思いを語ります。

西屋旅館の母屋(JPG:152KB)

重厚な佇まいの西屋旅館の母屋。

遠藤友紀雄さん(JPG:69KB)

西屋旅館 代表取締役社長の遠藤友紀雄さん。

白布温泉(JPG:134KB)

3軒の茅葺屋根の旅館が立ち並んでいた頃の白布温泉(平成11年頃)。

旅館のカフェでホッとひと息

旅館それぞれに味がある白布温泉。古くからの温泉地といっても、店や旅館がぎっしりと立ち並び賑々(にぎにぎ)しい、というわけではないので、ゆったりとした雰囲気を味わうことができ、何度も訪れるファンも少なくありません。加えて、昨年度より冬期間限定で「あったカフェ」をオープンしています。これは白布温泉、天元台エリアの旅館や日帰り温泉施設が行っているイベントで、それぞれの施設でオリジナルのカフェメニューをいただくことができます。今年度は12月17日から2月26日までの間、土・日・祝日(年末年始を除く)にオープンの予定。宿泊や日帰り入浴以外で旅館に気軽に入れるチャンスですので、この機会に白布温泉を訪れてみてはいかがでしょうか。

あったカフェ(JPG:68KB)

「あったカフェ」では、旅館の囲炉裏の周りなどで、コーヒーやココア、ワインなどをいただけます。

一歩足を伸ばして、雄大な自然にふれる

白布大滝(JPG:150KB)

しぶきを上げ豪快に流れる白布大滝は、温泉街から徒歩5分程度。冬場は閉鎖しています。

温泉につかってゆっくりする…、というのはもちろんいいですが、これからの季節は、あわせて天元台スキー場でスキーなどを楽しむのがもう一つのおすすめコースです。天元台スキー場は、例年12月中旬から5月連休明けまでの長い期間楽しむことができます。また、スキー場の斜面は北向きで、直接陽があたる時間が少ないため雪が溶けにくく、パウダースノーを楽しめます。「北海道の雪質にとても近い」と常連のスキー客からお褒めの言葉をもらうこともあるそうです。

冬場に限らず、磐梯朝日国立公園の中に位置する白布温泉の自慢は周囲に広がる豊かな自然。夏のトレッキングや秋の紅葉狩りなど、四季折々の魅力がいっぱいです。みなさんも、白布温泉を拠点に、雄大な自然の中で、ときにゆったりと、ときにアクティブに、ひとときを過ごしてみませんか。

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