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更新日:2020年9月28日
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(平成28年10月7日掲載)
サワラ(鰆)といえば春の魚のイメージですが、庄内のサワラは9月から漁が始まり、10~11月に旬を迎えます。食べ方はお刺身・炙り刺しがイチオシ。表面を軽くバーナーで炙ると、とろけるような脂の旨みが、サワラの身全体に広がるのです。
縁起の良い出世魚としても知られるサワラは、温暖な気候を好み、日本海では海水温の高い水域の沿岸部に生息します。成魚は最大1m近くまで成長します。瀬戸内海や駿河湾などでは春の魚として知られ、足の速い(身が傷みやすい)魚であることから、従来は西京漬けなどの加工品として食べられてきました。
近年の夏から秋にかけての海水温の上昇にともない、10年ほど前から、庄内地域沿岸でも漁船の網にサワラが掛かるようになりました。脂の乗りも良く、お刺身などで食べると美味しく、炙ると特に濃厚な旨みがあることから、庄内おばこサワラブランド推進協議会(会長・鈴木重作さん)では生食できるサワラを東京・築地市場へ出荷し始めたのです。
これが「庄内おばこサワラ」
サワラは一人船による「はえ縄」という漁法で漁獲されます。いかにして庄内のサワラを、鮮度を保ったまま消費者に届けるか…。庄内おばこサワラブランド推進協議会のメンバーは、山形県水産試験場でデータを取りながら、船上で行う独自の「活(いけ)締(じ)め」や「神経抜き」などの技術を編み出し、長時間の鮮度維持ができるようになりました。
鶴岡市内の米子新港で、出漁に備える鈴木さんの持ち船 剛雄丸(こうゆうまる)
庄内おばこサワラブランド推進協議会 鈴木剛太さん。
「釣り上げたサワラにはすぐ頭と尾の付け根に切り込みを入れて体内の血を抜く『活締め』と身の硬直を遅らせるための『神経抜き』を行います。揺れる船の上で一匹ずつ処理をしなければならないのは大変ですが、この処理をすることにより、鮮度が落ちるのを防ぎ、臭みのない、キメ細かな身質を維持できるのです。」と同協議会の鈴木剛太(こうた)さんが教えてくれました。
サワラの活締めと神経抜きにより、通常では2、3日しかもたない切り身が1週間近く鮮度を保てるようになりました。加えて3日目以降、身に旨みが増していくという効果が生まれ、さらに美味しくいただけるようになったといいます。
出荷にあたっては、氷の上にシートを敷きサワラを置くことで、身が傷まないようにするなど、丁寧に箱詰めしています。さらに一匹一匹にタグを付け、さらに抜き打ちで品質チェックをするなど、ブランド力を高めるための努力も続けています。
庄内からサワラの出荷を始めた当初、東京ではサワラを生で食べる文化がなかったことから、築地市場に送られたサワラは全く相手にされなかったそうです。しかし2年後には、その価値が認知されるようになり、7日間も新鮮さが保たれ、日を増すごとに熟成して美味しくなっていく「庄内おばこサワラ」を「日本一!」と言ってくれる仲買人も現れました。現在では、関東圏内の料理店などがこぞって買い求めるようになり、一流百貨店では高級魚として扱われ販売されています。
出荷される庄内おばこサワラ
国内の多くの漁業者が「水揚げされた魚の取引額が低価格で不安定」という悩みを抱えています。庄内地域も例外ではなく、状況を打開するため様々な取組を行っており、サワラのブランド化はその一環でした。通常のサワラの約2倍という高値で取引されるようになった「庄内おばこサワラ」は全国的にも優良事例であり、2015年には、全国漁業協同組合連合会主催の「全国青年・女性漁業者交流大会」で農林水産大臣賞を受賞しました。
庄内おばこサワラブランド推進協議会のメンバー
「日本一」とまでいわれるようになった庄内おばこサワラ。地元漁師のみなさんはどんな食べ方をしているのでしょうか。鈴木さんにお聞きしました。「鮮度が良いものはぜひ刺身で食べて欲しい。ウチでは4~5日置いて、熟成させてから食べています。バーナーなどで炙ると、皮と身の間の脂が、じょわ~っと出てくる。白身なのにまぐろの大トロみたいな旨さになる」のだそう。しゃぶしゃぶもいいし、照り焼きやムニエル、フライ、グラタンなど、濃厚な味付けも美味しいそうです。
脂がのって濃厚、お刺身でどうぞ。
おばこサワラのソテー
築地市場で定評を得た庄内おばこサワラですが、現在では山形県内の飲食店にも販売されており、鶴岡市立加茂水族館内のレストラン「魚匠 ダイニング 沖海月(おきみづき)」や、鶴岡市鼠ヶ関の「鮨処 朝日屋」など漁場の近隣店を始め、内陸の山形市内でも提供されています。「サワラは秋から冬にかけ、ますます太って脂も乗ってきます。大きさも70cmくらいに。丁寧な仕事で味が落ちないようにしていますから、ぜひ食べて欲しい」と鈴木さん。
これからが最もおいしくなるシーズン。「庄内おばこサワラ」をお店で見かけたら、ぜひご注文を。
美味しさが際立つ「炙り刺し」