高木孝治

大工

高木孝治の仕事。
古民家ライフ株式会社 代表(山形市)

古民家には、伝統の技法、暮らしの哲学、
自然環境との共生など、
失ってはいけないものがすべて詰まっている。


※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。

高木孝治 建築家になることが小学生の頃からの夢だった。古民家との出会いは本屋で見た1枚の写真。引きつけられた、ただ直感で「これだ!」と思った。環境保護にも関心を持っていた高木さんの中で、建築と環境が交わるところ、それが古民家だった。
建具屋での修業や建築学校を経て設計事務所に勤務。並行して建築家・鈴木喜一氏が塾長を務める「神楽坂建築塾」にて古民家の実際を学んだ。古民家をめぐって常に叫ばれるのは「技術の復権」という課題。しかし、周囲ではそれを受け継ぐ大工がいないことを嘆く声ばかり。「それなら自分がなるしかない」。高木さんはそう決意し大工に転身する。

山に木を見に行き、古民家と同じ工法で新築の家に取り組む。スーパーで買うように家を建てほしくない。

伝統的構法を学び、独立して 本格的に家づくりに取り組み始めたのは平成18年から。建築基準法に乗っ取るため金物を使ってはいるが、構造は昔ながらの木組み。合板は出来るだけ使わず、使用する木材もトレーサビリティ、ウッドマイレージを考慮し150キロ圏内と決めている。
施主も一緒に山に足を運んでもらう。材料がどこから来たかを知ることで、自分の家に対する愛着がまるで違うし、木は活きていることが実感としてもらえるため、ひび割れなどの無垢材にありがちなクレームも少なくなるという。
また、自分の作業場を持たず、製材屋さんに間借りさせてもらい仕事をしていきたいというのも高木さんのスタンス。余計な経費はすなわち施主の負担になるからだ。

古民家の解体に立ち合うことで、先人の技術を学ぶ。
その延長上に古民家ライフをサポートする活動がある。


古民家を解体し再生することで、建物だけでなく、そこに込められた伝統技術、知恵、自然環境との共生といったあらゆるものを次の時代に受け継ぐことができる。解体を通して学んだ技術は、新築の家づくりに活かしていく。だから、古民家も新築も自分の中では全く変わらないと高木さんは言う。古民家をほしい人と解体し譲りたい人を結ぶネットワークも、その考え方の延長上にある。「新築の家は、百年後、二百年後の古民家。自分はそれを繋ぐ媒体、"継手"そのものです」。