匠の仕事:高橋建築(N邸/東根市)

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木の性格を読み、技を使い分ける。
それが金山大工の真骨頂。
高橋浩樹 熟練の匠 認定番号022

高橋建築
〒999-5402 最上郡金山町大字金山455-2
☎ 0233-52-2322


※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。

高橋浩樹さんの父、新さん(故人)は金山大工として休みなく働き、浩樹さんも小学校4年生から夏休みも返上して手伝わされた。父が手がけていた金山型住宅は、金山杉を手刻みし、組み立てる。熟達した技が必要だが、小学生の頃から見よう見まねで覚え、大工に就いた時にはある程度の技を身に付けていた。23歳の時、浩樹さんは1軒の家づくりを志願した。「簡単だと思った」。しかし、墨付けなどに時間がかかり他の職人さんに迷惑をかけてしまった。以来、建てるたびに「前よりもっと上手く建てよう」という思いで腕を磨いた。そして35歳の時に棟梁として独り立ちしたのである。
平成16年、築約250年の古民家の移築を手掛けた。解体し、補修し、復元する。昔の大工は金物を一切使わずに木組みをする。浩樹さんもそれにならい3年の歳月を費やして復元させた。それは、金山大工としての技を身につけたと実感した瞬間でもあった。
浩樹さんの真骨頂は木使いにある。金山杉は樹齢80年以上のものしか伐採しない。そのため木目が混み、反り暴れが起こらない赤身の部分が厚い。その赤身の状況から木の性格を読み、継手や仕口の技を使い分ける。それは培った勘でしかない。「自信があります。金山大工の父の血がしっかりと流れていますから」と浩樹さんは胸に手を当てた。

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〈取材協力/資料提供〉設計・施工 高橋建築

匠の手がけた作品

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金山杉の良さを最大限に引き出す
熟達した匠の腕が冴えわたる。

金山大工の高橋浩樹さんが手がけたN邸は、外観を見る限り金山型住宅のスタイルではない。しかし「建築中の構造を見ましたが、柱や梁の組み立てはまさに金山の伝統技術そのものでした」と施主のNさんは目を輝かせる。浩樹さんは父から「柱を結合するホゾは長く取れ」と教わった。構造を強くするための知恵だ。それらの教えを忠実に継承している。それは木使いにも見られる。N邸では玄関の天井や隣接する水廻りにも金山杉の赤身が存分に使われている。美しいだけでなく、長期の水湿に強い赤身。その素材の良さを存分に活かしたしつらえである。
LDKはアイランドキッチンを配した開放的なオープン空間。金山杉のあらわしの梁や壁板の木肌が、大きな開口部からたっぷり入りこむ陽光と調和し、優しい雰囲気を醸し出している。手づくりの建具はもとより食品庫や家事室、シューズクロークなどにも金山杉を使用。木目が美しいだけでなく、調湿性能が優れているため、結露やカビ・害虫を防ぐ効果もある。まさに一石二鳥だ。LDKと内庭を隔て設けた和室も注目される。天井、柱、障子に金山杉などの無垢材を使用。木目の美しさに匠の息吹を感じる端正な空間だ。杉の一枚板でしつらえたテーブルも見応え十分だ。「すべてにおいて大満足です」とNさんが喜ぶように、素材使いの素晴らしさはもとより、書斎や内庭など、敷地を巧みに利用したプランニングやデザイン性にもこだわりが垣間見える家。そこに、伝統の技を現代に活かす新しい金山大工の姿がある。

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施主の声

「気兼ねなく話しをしながら一緒に検討し、家を組み立てていく」という感じでした。途中経過などを見させていただき、その場その場でこちらの要望を叶えていくという雰囲気です。現場で加工して、組んでいくハンドメイドの住まいづくりは、出来上がるにつれて感動を覚え、自分の住まいに特別感を感じます。「木の暖かみのある家をつくりたい」というのが希望でしたが、家を造る人の温もりも感じられる住まいが完成して満足しています。