伝統工法でつくる自然感あふれる2階居住の家

<Data>
◎タイプ:3LDK ◎家族構成:4人 ◎築年月:平成24年4月新築 ◎敷地面積:110.17㎡(33.3坪)
◎延べ床面積:104.33㎡(31.56坪)1階:48.02㎡(14.53坪)2階:56.31㎡(17.03坪) ◎構造:木造2階建 ◎工法:在来工法
◎工事期間:5ケ月 ◎補助金等:山形の家づくり利子補給制度

<新築プラン>
■親世帯と子世帯の"心地よい距離"に配慮した設計プラン
■回遊性があり、オープンな間取りで一体感を演出する居住空間
■2階のリビングダイニングから連続する開放的な空中デッキ
■大工の優れた技術を生かした伝統的工法で、2階を跳ね出し
■自然素材をふんだんに使うことにより環境負荷を低減
■構造材に県産材を使用し、山形の家づくり利子補給の基準に適合

伝統工法でつくる自然感あふれる2階居住の家

"心地よい距離"の居住空間を実現し、
自然素材と先人の知恵を生かした
高断熱・ローエネルギーの快適住宅。

施主は30代の若夫婦で、両親の家の敷地内に自分たちの住居をつくりたいという要望だった。設計にあたっては、まさに『みそ汁の冷めない距離』に親世帯と子世帯が暮らすために、"お互いに心地よい距離"を模索した。子世帯のために分割された敷地は余裕のある面積ではなかったことから、親世帯との適度な距離を立体的にとる目的と、日照を得るために、主な居住空間を2階とした。

リビングダイニングとスタディコーナーを設けた2階は、回遊可能な一体空間となっており、リビング側は板貼りの勾配天井、ダイニング側は天井の高さを抑え、空間に変化を出している。ある程度プライバシーが求められるスタディコーナーは、リビングダイニングと階段室を挟んでゆるやかに繋がる。ここでも家族の"心地よい距離"に配慮した。

伝統工法でつくる自然感あふれる2階居住の家 また、リビングダイニングから連続する空中デッキは、木製のルーバーにより階下からの視線を遮っているため、広がりのある気持ちのよいスペースとなっている。引き込みサッシを全開すると、リビングダイニングと空中デッキが一体化し、さらに開放感を感じる快適な空間となる。この空中デッキの下は、カーポート、また玄関へのアプローチとして利用している。空中デッキ部分が玄関の庇となるため、雨や雪の日にも濡れる心配はない。

伝統的工法を駆使した快適な造り

2階を主な居住空間としたことによって、必然的に2階のボリュームが大きくなった。そのため木造の伝統的工法の一つである「渡り腮(あご)」で2階を跳ね出している。優れた技術を持った大工が残る山形では、大工による手刻みの技術を継承していく意味からも伝統的工法を用いることは重要である。デザイン的には、1階外壁は火山噴出物の「シラス」を活用した100%自然素材の塗り壁仕上げで上品な質感を醸し出し、2階は空中デッキ部分の木質感が映えるよう黒いガルバリウム鋼板とした。

伝統工法でつくる自然感あふれる2階居住の家

素材と工夫で環境負荷の低い家に

「県産材を使った家で、安心して子どもを育てたい」というのも施主の要望で、構造材に西川町の西山杉を使い、内装材料は無垢の杉の床材や塗り壁などで仕上げられており、1階寝室の天井は、2階の構造床をそのまま生かした現し仕上げとしている。自然素材を多用し、五感に訴える風合いや手触りを心がけた。

夏暑く冬寒い山形では住宅の断熱性能も重要で、環境に優しく断熱性に優れたセルロースファイバーを壁と屋根面に吹き込んでいる。また、基礎は寒冷地に適した基礎断熱とし、サッシは断熱サッシを用いた。

さらに、機械的に温熱環境をコントロールするだけでなく、大きな窓や庇を設けることで、太陽の光や風といった自然エネルギーを有効に生かしている。夏場はエアコンに頼らなくてもいいよう風通しのよい開放的なつくりにし、快適性を高めた。暖房は、1階の基礎コンクリートを温める簡易オンドル方式と2階のエアコンで全室暖房を可能にしている。

自然素材で建てられた家は、家族とともに経年変化していく。それが住まいの味わいともなり、結果的に環境負荷の低い家づくりへとつながるのではないか。

伝統工法でつくる自然感あふれる2階居住の家

施主の声

家を建てる前に、施工者から建材に使う杉材(西山杉)を西川町の山まで見に連れていっていただき、実際の木を見て「この木で家が出来るんだ」と安心感が湧きました。

とても明るく、バルコニーと居間を全開にした時は開放感があり、2階を主な居住空間として、とても良かったと思います。 木をふんだんに使い無垢の床材なので、裸足で歩くととても気持ちいいです。


<取材協力/資料提供> 設計:設計島建築事務所 施工:古民家ライフ株式会社