菖蒲知津子

内装

菖蒲知津子の仕事。
菖浦表具内装店(山形市)

大胆な早さと緻密な仕上げこそ内装業の真骨頂。
素材や季節によって、段取りやノリの調合なども違う。
張る、合わせる、納める熟練の技と繊細さで、
現代の住まいを個性的に表現する。
「何千万とかけた家の最後の仕上げ、施主さんが毎日目にするものだから」
夫唱婦随で身に付けた技術に誇りがある。

菖蒲知津子 表具師として初代をかまえたご主人に嫁いだ時、畳屋との区別さえつかなかった。それがいつしか現場に出て手伝ううちに、なくてはならない片腕に。足場の下から主人の顔を見るだけで、何が必要なのか分かったという。
文字通り夫唱婦随で手がけた仕事の代表が、寒河江市市郷土館の移築工事だ(旧西村山郡役所/昭和58年10月完成)。現在はほとんどがボードの上にパテ塗りをして継ぎ目を平らにし、クロスを張るのが一般的。だが、郷土館の場合は昔ながらの技法で、ざら板に5、6回も下張りをし、それから高級和紙を張るという特殊で手間も神経も使う仕事だったと振り返る。
女と子供は現場に入るなと怒られた時代、女性ならではの丁寧な作業で施主にも認められた。柄物のクロスの場合、柄をいかに合わせるかが菖蒲さんの腕の見せどころ。また、開口部が複雑な場所、細かく狭い部分など、男なら面倒になるところも特に得意だという。
クロスは生地によって伸びが違ったり、ノリを着けてから貼るまでの時間に微妙な違いがあるし、季節によってもノリの乾き具合に差があるため、長年の勘が求められるそうだ。和紙などの薄い紙や布製の素材も違った難しさがある。また、つなぎ合わせの時に駆使するカッターで指を切って一こそ人前、ノリ付けのための刷毛塗りで指が曲がってこそ一人前などとも言われるようだが、内装業ならではの喜びもある。
「部屋ごとに違ったデザイン、ツートンだったり花柄だったりとバリエーションがある凝った内装はたいへんだけど楽しいですね」。
何よりも、家づくりの締めの仕事、施主から仕上がりを喜ばれると本当に嬉しいと顔をほころばせる。家庭と仕事、長年昼夜をともにしてきたご主人は4年前に他界し、今は息子さんが後を継いでいるが、菖蒲さんもまだまだ現役。
「自分が手がけた建物の前を通ると、必ず仕事をした時のことが思い出されます。だからこそ丁寧な仕事をこれからも続けたいですね」。