田村広行

内装

田村広行の仕事。
総合インテリア タムラ看板(米沢市)

室内の壁全体を覆う「クロス」や
部屋を仕切る「襖」「障子」には、
住まいの印象や雰囲気を大きく変化させる魅力がある。
職人は望まれた空間を想像しながら、
一つひとつ声をカタチにしていた。


※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。

田村広行 家族が働く工場で見出した
職人への憧れ


祖父は大工、父は看板屋。田村さんは、幼い頃から工場で家族が何かを製作する様子を見ながら、「作る楽しさ」を知り、自らの生業もモノづくりの仕事以外考えられなかった。高校生の頃、父が内装という仕事を提案。興味を持って、卒業後宮城県にある(有)ハマショウという内装表具店へ就職。5年の修行を経て米沢に戻り、独立を果たす。まだ現役だった父と肩を並べ仕事をしていると、しだいに様々な仕事の依頼が。
店舗や一般住宅の内装工事を主としながら「総合インテリア タムラ看板」という名を掲げ30年、積み重ねた経験と技術、知識を活かしながら、広くお客様の要望に応えている。


ハンディキャップを乗り越え得た
確かな技術と、お客様の信頼


田村さんは生まれつき左利きである。スポーツマンにとって有利な左利きも、職人にとっては大きなハンディだと田村さんは言う。なぜなら建物は一般的に右利きの人が使いやすいようにつくられる。言うまでもなく看板の文字も右から書かれている。当時市販されている道具のほとんどが右利き用で、弟子入りした会社の親方には「もう左利きの弟子は取んね‐( 笑)」とぼやかれながらも、当時もらった左利き用のハサミを今でも大切に使っている。
その他の道具も使いやすいものを探したり、工夫しながら、それぞれの作業と向き合い、技術を磨いてきた。
「父はそれらを考慮して内装工の道を勧めてくれたのかなと、思っています」。

25年前には国家資格「1級壁装技能士」の資格を取得。看板屋という性質から、内装工事以外を担うことも多くあり「本業は?」と問われた際に「クロス屋です」と自信を持って答えられるよう、確かな証明がほしいという理由からだった。そして家や建物をトータルで見ることのできる視野を持ち、お客様の力となってきた。「古く汚れた壁が、クロスによって新たな空間として生まれ変わり、喜んでいただけることが何よりもうれしいですね」。


実績から生まれた
「とりあえずタムラ」の安心感


クロスや障子、襖の貼り替えをしていると、開きにくくなった建具がある等の、家のあちこちの困りごとを相談されることもことも多い。もちろんできないことについては、繋がりのある職人を紹介するものの、お客様の中に「とりあえずタムラに聞いてみよう」という感覚があるのがありがたい事。

ニーズに対し「何とかしたい」と日々力を尽くし、内装に留まらず多種多様に仕事ができるのも職人としての面白さである、と田村さんは語る。
「職人は向上心を持ち健康でさえいれば、年をとってもできる仕事。年々進化する内装の資材や機器で技術力を高めながら、確かなモノづくりを手掛けていきたいです。」