技術の伝承:高梨建設株式会社/阿部正行・鈴木孝一

〒999-3511 西村山郡河北町谷地字霊堂20-1 ☎ 0237-72-7755

阿部政行
下働きは、いわば「学校」。
本物の大工になるための通り道だ。

阿部政行
熟練の匠 認定番号055
鈴木孝一
上手くいった時の喜びは最高!そのために学ぶことは沢山ある。
鈴木孝一
熟練の匠 認定番号056

手仕事があっての家づくり。
切磋琢磨してきた技で生涯現役!

高梨建設の大工・阿部政行さんと鈴木孝一さんは同時代に入社した「兄弟弟子」だ。どちらも「一生活かせる技術を身につけたい」と、住み込みで修業を始めた。経験ゼロからのスタート。親方からは「技は見て覚えろ」と口酸っぱく言われた。しかし、職人それぞれにやり方が違う。「まさに十人十色。いいとこ取りの精神で一生懸命覚えました」と鈴木さんは苦笑する。下働き時代は辛かったが「学校で教えてもらう気持ちだった」と阿部さんは感謝する。約5年間の下働きの後にお礼奉公を経て現場を任された。「プレッシャーで眠れなかったね」と鈴木さん。でも「墨付けをして、刻んで、木と木がピタッとはまったときは感動した」と笑う。以来50年、お互いに切磋琢磨しながら、数多くの住まいを造り上げてきた。そして、家づくりはプレカットの時代を迎える。でも、「手仕事の大切さは変わらない」と二人は口を揃える。例えば継ぎ手の場合、プレカットができる素材の太さは限られている。結局、手仕事に頼らざるを得ない。また、リフォームの場合、家の構造や傷み具合に合わせて素材を加工するため、手仕事しか通用しない。大工仕事は体力的にも大変だ。「でも完成したときの感動は何ものにも代えがたいね」と言い、「だからこの年までやってこられた」と二人で顔を見合わせる。そこには「まだまだやれる」という自信が満ちあふれていた。

いつの時代も変わらないのは
丁寧に測り、刻み、組み立てること。

 今、2人は若手2名の育成に力を入れている。指導するうえでこだわっているのは「丁寧さ」。正確に寸法を測り、刻み、組むことだ。無垢材同士の組み立ては修正が効くが、既製品との組み立ては採寸や刻みを少しでも間違うと、すべてやり直しとなる。技の修得は「見て覚えろ」とは教えるが、見ても分からないところもたくさんある。例えば、道具はいつも最高の状況で使えるように準備しておくこと。電動器具はきちんと片付けないと危険なこと...等々。これらは普段の会話を密にすることで伝えられる、と考えるが、親子以上の年齢差だけに、そう上手くいかない。「今の人は休憩になるとすぐスマホを見だしてね」と二人はちょっぴり不満顔だ。「まだまだ学んで欲しいことは山ほどある」と言いつつ、若い人に一目置くこともある。「コンピューター関係に明るいし、覚えも早いですね」。今、家づくりの領域にコンピューターがどんどん入り込んでいる。「彼らに教わることも多い」と二人は素直に若手の才能を認め、「いいとこ取り」の精神を生かしたいと話す。「どんな大工になってほしいか」との問いに、「どこにいっても好かれる大工になってほしい」と鈴木さん。「現場で恥をかかない大工になってほしい」と阿部さん。この時ばかりは父親のような顔になっていた。