技術の伝承:有限会社畠山工務店/畠山重信・安食昭夫
〒990-0015 山形市大字新山223 ☎ 023-629-2111
畠山重信
平成3年度 伝承の匠 知事表彰
熟練の匠 認定番号001
安食昭夫
熟練の匠 認定番号002
生きている木を相手に
どこまでも細密に、完璧を目指す
大工には「墨付け」という仕事がある。材木を手で刻むために印をつける作業だ。最近は機械加工が主流だが、「大工の仕事は本物の木が相手。木は寒暖や湿度で厚みも変わる。それを計算して加工しないと納まらない。紙切れ一枚、髪の毛一本の世界なんだ」そう話すのはこの道50年の安食さん。時代が変わっても、大工職人として木を知るべしという根本は変わらない。
「墨付けして、家1軒を仕上げられる人を育てたい。大工を指導できるような」と話す畠山さんは昭和42年、23歳で会社を立ち上げた。起業を志したのは、将来を親身に考えてくれた訓練校の先生の一言があったという。「『人を使う立場になれ』って教えがずっと頭に残って」。そうして会社設立から1年目に、同じ先生の紹介で安食さんがやってきた。以来50余年、2人は職人として社業を支えてきた相棒といえる。
畠山工務店は当初3人でスタートした。「休みの日は現場を見に行って、夜は何か試作して。毎日の休憩時間は道具の手入れ。『2年で飯が食えるようになる!』って気持ちでやってきた」と安食さん。実際に2年目には家1軒を任され、30代以降は本格和風建築を何軒も手がけた。「昔は仕事の夢を見たね。毎日どうすれば仕上がりよく納められるか考えて。和風の家は大工の仕事が全部見える。そういう難易度の高い仕事は今もやってみたい」そんな安食さんについて畠山さんは「努力家で芯の強い人。何より大工の仕事が好きなんだべね」と話す。安食さんは20代で一級建築士の資格を取得したが、現場管理には回らず、大工職人を選んだ。「俺はものづくりが好きだから。趣味は仕事」。
好きだからこそ努力する。
それが形になるものづくりの仕事
現在、畠山工務店には20~70代まで各世代の社員が揃う。見習い期間は約4年、その区切りで人材を採用し、仕事の姿勢や技術を伝承している。昨年入社した東海林龍雅さんは、子どもの頃から大工に憧れていたという21歳。「専門校の企業説明会の時、若手の育成に力を入れていることや資格取得をサポートしてくれること、それと何より会長の温かい人柄を感じました。今は学ぶことばかりですが、安食さんの技術力を目指したい。いつかは『伝承』の担い手の一人になれたらと思います」。
これまで何人もの若手を迎えてきた安食さんは彼らに「寝る前に5分でいいから仕事のことを考えろ」と話すという。「この仕事で飯を食えるようになってほしい」という想いからだ。安食さんは彼らの仕事を見守り、課題が見つかると「何か忘れでねが」「どこか違ってねが」と根気よく問いかけるという。そうした世代間の交流が、次世代の職人を育てるのに欠かせないと畠山さんは考える。大工を育てるのは工務店だからできること。それができて「人を使う立場に」という言葉が生きてくる。「昔は先輩の仕事を見て覚えるって言ったけど、今はとにかく聞く、話すこと。若い時には分からなかった教えも、いつか大事なことだって分かる」。畠山さんが訓練校時代の先生にもう一つ言われたのが「損して得取れ」ということだった。職人は常に100%の誠実な仕事をしていれば、必ず信頼され対価を得られる。「この仕事を続けてるのは、大工が好きだってそれ以外何もないべね」という畠山さんと安食さん2人のまっすぐな姿に、若い世代は好きなことを仕事にする純粋な憧れを抱くのかもしれない。
東海林龍雅
山形県若手大工育成支援プログラム(※)対象
認定番号第18-020号
※県では平成30年度より「山形県若手大工育成支援プログラム」の認定を開始し、県内の若手大工の技能習得をサポートしています。