匠の仕事:株式会社 大井工務店

佐藤寿寛
時代が変わっても変らぬ基本。
身に付けた者ならでは技が光る。
佐藤寿寛   熟練の匠 認定番号008

株式会社 大井工務店
〒998-0853 酒田市みずほ1丁目21-11
☎ 0234-22-2262


※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。

佐藤寿寛さんは20歳で弟子入りした。まったくゼロからの出発であったが辛くはなかった、という。「とにかくこの世界が好き、なにもが面白いと思った」と当時の心境を話す。上司からは「最初は時間かかってもいいから、丁寧にやれ」と教えられた。「時間がかかっても」といわれても、周りと比べれば明らかに遅いと感じれば焦る。どうしたら丁寧に、確実に、そして速く出来るかを考えた。その結果、基本が大事なことを知った。業界はプレカットが主流の時代であったが、先輩の刻み、切り込み、そして墨付けを盗み見しながら覚えた。そんな真摯な佐藤さんの態度を見て、会社は車庫づくりを任せた。建物の規模によってはプレカットより手で刻んだほうが早いケースがある。プレカットでは加工出来ない継ぎ手や仕口を使う指示のある現場であれば手で刻むしかない。また、電気工具が主流の時代でも、手道具を使いこなせない人は電気道具を使いこなせないともいわれる。「とにかく基本が大事です。それぞれの材木のクセを見ずに加工して組むと、最初はきれいに見えますが、年数が経てば差が出てくるケースが多い」と話す。
何度も何度も確認しては見直して組み立てた車庫。完成時にはそれまでに経験した事のない達成感と満足感に満たされ、さらなる向上心が沸いてきたのをはっきりと覚えているという。今、佐藤さんは「手刻みで建ててほしい」という施主さんの依頼で1軒の家づくりに挑んでいる。その現場で1本の木を切り、削り、刻み、組み立てるたびに「今まで学んだことは決してムダではなかった」ことを実感しているという。

佐藤寿寛

〈取材協力/資料提供〉設計・施工 株式会社 大井工務店