匠の仕事:株式会社大沼建築:安孫子 幸司(S邸/高畠町)

安孫子 幸司
迷いなく、選び、刻み、組み立てる。
その技を極めてこそ、プロである。
安孫子 幸司 技能の匠 認定番号052

株式会社 大沼建築
〒991-0012 寒河江市新山町20-3
☎ 0237-86-1633


※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。

「迷いのなさ」。安孫子幸司さんは「プロの技」についてこう話す。専門学校を卒業して大沼建築に入社した時に、先輩の手仕事の「速さ、美しさ」に圧倒されたという。木を見て、迷いなく、即、ノミを叩き、ノコギリを入れる。仕上げにキレがある。このプロの領域に達するために、安孫子さんは努力を重ねた。仕事を終えた後、家で木の刻みや組み立てに励んだ。4年後、以前出来なかったことが、スピーディに、スムーズに出来るようになったとき、手ごたえを感じたという。「このまま一生懸命努力していけば、大工としてやっていけるのでは」と。間もなく棟梁として現場を仕切るようになった。
現場では若い人に、言葉で教えるのではなく、「見て覚えろ」と言っている。自分がそうであったし、その結果、難しい仕事に立ち向かったときに自分で考え、切り抜けることができたからだ。とはいいつつ、「実はすごく口下手だからなんです」と苦笑する。
安孫子さんがこだわるのは、木の組み合わせである。同じ木でも色合いが微妙に異なり、その組み合わせによって空間が美しくも、醜くもなる。「空間の落ち着きが違う」という。木の扱い方は、設計図には描いてはいない棟梁にまかされた仕事である。「迷いなく、手早く選び、刻み、組み合わせて、美しい空間を生み出す」。それがプロの矜持と考えている。

〈取材協力/資料提供〉設計:瀬野和広+(有)設計アトリエ 共同:(株)  施工:(株)大沼建築

匠の手がけた作品

匠の手がけた作品

新しい感覚と伝統の技術が一体化し、
今までにない新鮮な機能とくつろぎ感を創出。

高畠町に建つS邸・「まほろば里住」は、建築士の設計のもと、安孫子さんを棟梁とする大工たちの手で建てられた。第一の特徴は冬期の雪下ろしの苦労を無くした外観。降り積もる雪は単純に滑落させ、軒先の雪山はそのままにできるように、屋根と壁の単純一体形とし、個性豊かなデザインでまとめた。室内のコンセプトは「新しい土間と床座生活」。リビングというおきまりの間取りを取り払い、土間と床座を設け、2階まで一体化した。全面窓が生み出す開放感と相まり、住む人に今までにない新鮮なくつろぎ感を与えてくれる。
温かさとやさしい香りに包まれる無垢材の床や建具、懐かしさを感じつつも新鮮な感覚を覚える現しの柱や梁。「金山杉」「西山杉」という山形県産の木材をふんだんに取り入れ、安孫子さんがこだわる、「美しい木の組み合わせ」の技を活かし、落ち着きのある、美と品の結晶ともいえる空間を創り上げている。
伝統の技も随所に駆使されている。ナラやカシなどの木材を、適材適所に取り入れ、土台と柱の継手、通し柱の仕口、梁と桁の継手など、一つひとつの部位を伝統の手刻みで加工し、がっちりと組んでいる。研ぎ澄まされたデザインと伝統の技がコラボした住まいは、美しさと強さの調和でもある。

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施主の声

山形県産の材料にこだわり、取り入れてもらったことがとても良かったと思います。金山杉と西山杉に囲まれ、豊かな心で過ごせる家に満足しています。プロの建築士さんや大工さんにお願いすることで、私たちの理想とした家をかたちにしてもらうことができました。