匠の仕事:株式会社大沼建築:新野泰輔(I邸/寒河江市)

新野 泰輔
大切なのは、素材の性質に合わせた「加減」。
それは、現場のコミュ二ケーションにも通じる。
新野 泰輔 技能の匠 認定番号053

株式会社 大沼建築
〒991-0012 寒河江市新山町20-3
☎ 0237-86-1633


※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。

野球がしたくて工業高校に入ったが1年で挫折。先生に勧められて「工作部」に入部して、初めてモノづくりの面白さを知った新野泰輔さん。専門学校に進み、学ぶにつれ、ゼロから形を創っていく大工の面白さにのめり込んでいった。しかし、卒業後に入ったプロの世界は厳しく、「学校で学んだことが通用しなくて、辛い日々でした」と当時を振り返る。しかも、「自己主張が苦手」という性格が災いし、現場でのコミュニケーションもうまくいかずに、苦悩の日々が続いた。
転機は突然訪れた。ある日、設計図の寸法より少し余裕を持たせて木を切ると、木と木の接合がうまくいくことに気づいた。「木の性質に合わせ、加減をもって刃を入れることが重要」と新野さん。人間関係も同じで、相手の立場や状況を見て、柔軟な態度で話しをすることの大切さを学んだ。以来、仕事が面白くなってきた。入社7年目の今、棟梁として現場を任されている。信条は、後輩とのコミュニケーションを大切にすること。一方で、住む人の立場にたった家づくりも心がける。使い勝手を考えて、設計図にない仕様を提案することで、施主と笑顔の交流が生まれる。新野さんは、夢だった自分の家づくりに取り組む。「今まで学んできたことを生かし、最高の家を家族にプレゼントしたい」と話す。2世の誕生も待っている。最高の家庭づくりにも取り組む決意だ。

〈取材協力/資料提供〉設計・施工 株式会社 大沼建築

匠の手がけた作品

匠の手がけた作品

漂うのは、木の温かさ、光と風の心地よさ。
使いやすさと美しさが両立した平屋の佇まい。

新野さんが手がけたI邸は、「木をふんだんに使った山小屋風の家」というIさんの希望を形にした平屋の佇まい。切妻の大屋根と木質感のあるサイディング、東側に配したウッドデッキが、Iさんが求めた「自然と調和した温かな雰囲気」を象徴的に表している。
玄関から入った瞬間、ふわーっと木の香りに包まれる。カラマツやスギなどの無垢材を床や天井に適材適所に取り入れた、心地よさに満ちた空間だ。吹き抜けの明るいリビングを中心に、キッチン、寝室、和室が連動して使える回廊型の生活動線。大勢の集まりに対応できるよう、リビングと一体感をもたせたモダンな和室など、多用かつ快適に使えるプランが、これからの暮らしを一段と豊かにしてくれそうだ。広々としたロフトは、2階建同様の使い勝手を創出している。そのロフトへ続く階段や建具類などの造作は職人の手づくり。繊細な仕上げに匠としての誇りが垣間見える。夏季は心地よい西風が吹く寒河江地域。その涼風がロフトも含め家じゅうを通り抜けるよう、窓の位置や形状を計算して配した。各部屋のしつらえも見事だ。特に離れ風に設けたもう一つの和室は、落とし掛けや床柱などに伝統の技を駆使し、本格的な和の空間に仕上げている。「建築中も何回も打ち合わせをし、棟梁からも細かい提案をもらい、本当に良い家ができました」とIさんも満足そうだ。

匠の手がけた作品 匠の手がけた作品 匠の手がけた作品

施主の声

将来、太陽光発電システムが搭載可能な屋根形状や、外からの見映えを考えて内に風除けの戸を設けた玄関、そして、目に触れない所に設けた収納空間やほどよい高さの仏壇まで、実にきめこまやかな配慮で、こだわりを持って建築していただき、とても感謝しています。