tradition-02p-1.jpg

建具

村岡公陽の仕事。
有限会社 丸正 村岡建具店 専務取締役(山形市)

端正でシンプルな格子で組まれた障子戸にも、
凛とした佇まいが感じられる。
肉眼では気付かないような細部へのこだわりと、
緻密な技が積み重なって全体の美しさを創り出す。
「戸一枚にしても単に開け閉めがスムーズならいいわけじゃない」
すぐれた職人には腕の見せ所がある。

tradition-02p-02.png工場に入るとその片隅に、選りすぐられた板材が細工される時を待って立て掛けられてある。香しい木の匂いが鼻をくすぐる。「材料は材木店に必ず足を運び、自分の目で確かめてから仕入れるんだ」。建具師として50年以上のキャリアを持つ村岡さんの流儀だ。
山形市もみじ公園内にある清風荘、山寺風雅の国などの建具を手がけ、旧県庁・文翔館の修復時には3年間通い詰めた。中学校を卒業後すぐに弟子入りし、5年の修業と務め職人を経て独立。「一人前として認められるにはほど遠いが、5年あれば一通りの技術は覚えられる」という。
建具師の仕事は、使う鉋の種類の多さからも容易に想像がつくように、緻密で多岐にわたる。0.1ミリの差が製品の出来を左右する組子は50種類以上におよび、扉、戸、障子、間仕切り、衝立など用途も多彩なうえに、それぞれに意匠も異なる。
「建具の良さは仕上げに尽きる。大まかなデザインや寸法は設計者や大工が決めるものの、組み方や現場でいかに納めるかは、建具師が決める場合が多い」。
取材におじゃましたお宅の、千本格子の欄間、雪見障子の仕口の納まりは素人目にも惚れ惚れするほど。優しい表情と端正で凛とした雰囲気が空間を引き締めている。
近年は、素材のカットをコンピュータ制御の機械に任せることが多く、手引きするよりも精度が高いものの、組む作業と現場調整は100%手作業。そこに腕の違いが出る。引き戸一つとっても、枠は厳密に言うと台形状にゆがんでおり、これにすべての辺の隙間をそろえる微調整が建具師のこだわりでもある。洋風の住まいが増え、建具のニーズが減ってきているのが現状。それでもと村岡さんは言う。
「建具そのものがなくなることは絶対にないし、職人として身に付ける技術は活かす場も多い。いい仕事をしていきたいですね」。