建具
毎日触れる扉こそ美しさとこだわりを。
繊細な伝統と自由な加工で
次世代と世界に、日本の技術を伝えていきたい。
※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。
変わらない木の温もりと
進化する技術を武器に
工場へ足を踏み入れると、職人が木を扱っていた。一つ一つの工程を真剣な眼差しでこなし、機械の音を響かせている。幼い頃から工具を打つ音やかんなの音、木の匂いを嗅いで育ったという佐藤さんは、先代である父の姿を見て建具・木工の世界へ歩み出した。
昔ながらの伝統技術を守りながら、機械を使った曲線加工を用いた制作を行なっている。工場の中央に置かれた一際目立つ大きな機械はNC制御のルータ・マシンといい、数値を入力することで自由な形に木を加工することができる。手加工では難しい複雑な曲線や正円を表現することが可能で、建具工としての知識や感性を生かし、様々な需要に合わせた建具を作り上げている。
永く家族のそばに在り続ける
ただ一つの建具を
「建具は長く使うもので、毎日手で触れるもの。」と話す佐藤さんは、だからこそ世代を越えて使い続けてほしいと続ける。昔の日本家屋には、洋風建築よりもたくさんの建具があり、それら全ては職人による手作り。木目や色で一つとして同じものがない一点物だが、以外にも造りは単純なものが多く、多少の不具合なら、かんな一つで直ってしまうほどだという。
日本の伝統技術と
新たな時代を見据えて
ほんの少しの差で、強度も美しさも大きく変わる日本の建具は、後世に残さなければいけない文化の一つとも言える。重い樽がぶつかっても壊れない酒屋格子や、子供の成長を願い産着にも用いられた組子の麻の葉模様など、先人の気配りや想いが込められた数々の技術がある。近年では建具だけに留まらず、身近な日用品へその技術が応用され、私たちの目に触れる機会も多い。
日本のみならず、世界からも注目を集め続ける日本の技術力。時代の変化と守るべき伝統を胸に、佐藤さんは未来に向けて新たな挑戦をし続けている。