大工
小さい頃に何気なく見た親戚の新築工事。
それ以来ずっと
住宅関係の仕事につきたいと思っていた。
※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。
東北芸術工科大学への憧れもあった。小学生の頃からオープンキャンパスに遊びに行き、ものづくりなどを体験した。そして入るなら、小さい頃からの夢だった家づくりの仕事に就きたいと、建築・環境デザイン学科を選んだ。しかし、いざ就活が始まると、企業の多くは、学生が学んだ専門分野は関係ない全学対象の求人がほとんどだった。
「大学ではたくさんのことが学べたけれど、自分の技術をかって採用してほしい、採用されたいといいう思いが強くなってしまって」と沼澤さん。
そこで、芸工大卒業後、山形県立山形職業能力開発専門校 建設技術科に入校した。同期12名のうち、女性はもちろん一人だけだ。
大学で学んだ知識や考え方が、実践的なカリキュラムを通し、リアルな実感として理解できる。大きな意識の変化だ。
学生時代、建築意匠を中心に、つくりたいものをイメージとして捉えていた。思い描く理想に偏りすぎていた。たとえばなぜ「910モジュール」で設計しなければ成らないか...など、頭の中でしか理解していなかったことが、実習の中で一つひとつ腑に落ちる。何より、「仕口加工や継ぎ手がうまくいったときなど、実際に手を動かすこと自体が楽しい。特に刃物を研ぐのは得意なんです」。
建設技術科では、基本的な道具の使い方や手入れ、様々な仕口は継ぎ手の刻みや組み技法に始まり、1年次は屋根を三種類変えながら1件の小住宅を、2年次は内装仕上げなども含む木造2階建住宅をそれぞれ実寸大で製作。確かな技術習得を目指している。
自分の手をかけて少しずつ形になっていくのは感激。
いつかは自分で設計した家を自分で建てたい。
実習においては体力的な男女差に時々つらい思いをすることがある。実際に働く環境はさらに男社会、厳しい現場もあるだろう。しかしその中で、少しずつ精神面でも自分なりに成長していきたいという。
人の手が作る家は暖かみがある。構造など完成すれば隠れて見えなくなってしまう場所もある。「でも、壁のなかにはめちゃくちゃ頑張った証があると思うと、すごく嬉しいですよね」。