大工
子どもの頃の夢を追い続け、
さらなる高みを目ざす日々
そして、日本一から世界一の大工へチャレンジ
※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。
思いはぶれずに進学し
難関の2級建築大工技能を取得
折り紙、綾取り...手を使う遊びが大好きだった若林信さん。木屑を組立て遊んでいたときに「手づくりで木の家を造る人」への憧れが芽生えた。小学校3年の時であった。以来、思いがぶれることはなかった。山形県立山形工業高等学校建築システム科へ入学し、さらに高みを目ざして山形県立山形職業能力開発専門校へ進学。専門校では道具の扱い方を徹底的に学んだ。中でも刃物研ぎにはこだわり、2年時には誰にも負けない腕を身に付けた。さらに、在学中に2級建築大工技能士を取得。現場経験のない学生には超難関の資格である。それは「大工になる」という絶対に譲れない夢の実現への第一歩であった。
技の日本一を競い合う
「技能五輪全国大会」で金賞を獲得
専門校の卒業と同時に大沼建築の門を叩いた。当初は工場の清掃や住宅の模型づくりであったが、大工の仕事に就けた若林さんにとっては楽しい毎日だったという。そんな「大工になる」ための修業を始めた矢先、思わぬチャンスが飛び込んできた。平成26年11月開催の「第52回技能五輪全国大会・建築大工の部(23歳以下)」の山形代表に選出されたのである。次世代のものづくりを担う若人が技の日本一を競い合う大会は、2日間、11時間45分にも及ぶ超過酷な競技である。与えられたテーマをもとに図面を描き、材料を加工し、組み立てていく。図面の確かさ、加工の精緻さ、組み立ての美しさが審査された結果、若林さんが見事、金賞に輝いた。
「お客様に感動を与える家を造る」
それが自分にとって最高の栄誉
快挙はうれしさとともにプレッシャーをももたらした。「金メダリストだから」との目があった。しかし、持ち前のポジティブさが「だからこそ頑張ろう」という思いに変えた。「お客様に感動を与える大工になる」。今はその夢に向けて先輩職人の技を身に付けるべく、下働きに精魂を傾ける日々であるという。
そして、金メダリストに与えられた世界大会への準備も怠らない。平成27年8月、ブラジルで開催される大会は、4日間22時間にわたって行われ、世界一の技を競う。「自分が納得できる作品を作りたい」と若林さん。そして「金賞をとったから現場の仕事ができるわけではありません」ときっぱり。「自分が造った家を見てお客様が喜ぶことこそが栄誉です」と言葉に力を込めた。
平成29年度からは、県立山形職業能力開発専門校の教員となり、県内工務店などで活躍できる若い匠の育成に尽力している。