神保滉太

大工

神保滉太の仕事。
株式会社近江建設 (山形市)

「ものをつくることが好き」大工を志す人の多くは
そうした動機や、職人としての姿への憧れを持ってその道を歩き始める。
自分の技術や感性が形になることの喜び。
神保滉太さんはそんな純粋なものづくりへの想いを技にして
日々の現場と、技能五輪という舞台に臨んでいる。


※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。

神保滉太 「大工になりたい」
夢を叶える想いの力


大工の仕事は昔から多くの男の子たちの憧れだった。神保滉太さんも中学校の立志式で「大工になりたい」と宣言し、念願かなって今年、大工歴2年目を迎える。
神保さんは山形工業高等学校の建築科を卒業後、山形職業能力開発専門校に進学、2年間の過程でトップの成績を修め、首席で卒業した。卒業試験は技能五輪全国大会の予選も兼ねていたため、その出場権も獲得。大工となって初めての年、現場デビューを果たすとまもなく、技能五輪に向けての夏合宿が始まった。「ものをつくることが楽しくて、しかも何でも早く早く!と終わらせたい性格で。でも現場では『ゆっくりでも丁寧に』が基本。より丁寧な仕事をという気持ちが強まったのは、技能五輪に出て一番の大きな変化でした」。神保さんは初出場した2018年の第56回技能五輪全国大会(沖縄会場)で、高難度の課題に挑み、見事敢闘賞を受賞した。


大工の技術を未来へ
若き芽が育つ環境づくり


「敢闘賞の受賞報告に来てくれた際、すでに翌年を見据えていたことに感動しました。前回の結果に満足せず、今年は入賞を期待しています」と話すのは、神保さんが勤務する株式会社近江建設の新保一広社長。新保社長は宮大工の出身で、若き社員が腕を磨くための環境づくりを惜しまない。「技能五輪の合宿で現場を休むことを嫌がる会社もあるかもしれませんが、気兼ねせず、ためらうことなく、彼らが一生懸命に取り組める環境を整えることが私たちの役割だと思っています」。近江建設ではこれまで、社員大工全員が技能五輪に出場している。出場者は先輩のサポートを受け、いずれは自分が後輩をサポートする、そうした支え合いの循環のもと、例年受賞者を輩出してきた。


多くの経験と広い視野で
建築のマルチプレイヤーに


「去年より上の賞をとらないといけない」と神保さんは力を込めて話す。「今年出場するのは歳下の子たちがメインなので、去年の経験を教えることもできます。一方でやっぱり負けたくない気持ちが強いですね」。昨年は緊張も手伝って、「受賞できるとは思っていなかった」という自己評価だった。その課題を携え、今年はさらに高みを目指すという。そんな神保さんら若手のこれからについて、新保社長はこう展望する。「建設会社に入社した以上、大工の仕事だけではなくさまざまな経験を重ねて、現場監督や営業の立場も知った上で総合的な見方のできる人材に育ってほしい」。生まれ育った山形で大工を志した神保さんだが、同級生は首都圏で同業に就いたという。「東京で大工をしている友だちからは『仕事の種類が多いね』と言われます。向こうは分業ですが、ここではあらゆる仕事を受け持つので、できることが増えます。大先輩たちそれぞれの仕事ぶりから学ぶことが多いです」。
「現状維持は劣化」新保社長はこの言葉をよく社員に話すという。人から学び、広い目を養って培われる、大工としての技量。そうした環境の中で大工という職人技は未来へと守られ、日本のものづくりの文化は受け継がれていく。