舩越文弘

石工

舩越文弘の仕事。
舩越旭弘石材店 二代目(山形市)

地域密着、この土地で「石工職人」として
生きるのに大切なのは、景観という視点から、
新たな石の文化を築くこと。
「心の時代といわれる今だからこそ
出来る提案がある。」


※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。

舩越文弘 石工職人としての親の仕事を見て育った舩越文弘さん。高校卒業後、日本の石材加工品の三大産地とうたわれる愛知県岡崎市に石工職人を目指し修行に出た。
岡崎市は石工業の盛んな町ということもあり、職業訓練校には全国から石工職人を目指す人が集まる。舩越さんも日中は石材店で働き、夜は職業訓練校に通って石材加工の技術を学んだ。
5年ほどの修行を終え、平成元年に戻ってきたが、すぐにお父さんが亡くなり、後を継いだ。実質、お父さんから石工職人としての技術を教わったことがなく、残された仕事をこなす為に父親と交流の深かった職人のみなさんから教わりながら無我夢中で仕事を覚えたと言う。
いままでの経験が活かされ、平成25年2月に開催された第27回全国技能グランプリ「石工」部門に山形県代表として出場した。
また、これからの石工職人は、加工技術だけでなくデザイン性を高める必要があるという。舩越さんは、自ら積極的な作品づくりも行っており、平成22年度開催の第65回県美展では、工芸部門で「山形放送賞」を受賞。平成25年度第68回県美展においても彫刻部門で入選している。

仕事柄、墓石がメインであるが、住宅の石垣づくりにも力をいれている。しかし、最近は石垣の石の積みが出来る石工職人が少ないと言う。
日本の伝統的な石積みは、石の目を見て手作業で加工しながら石積みする必要がある。経験豊富な年配の職人(70代)は、技術力があっても重い石を扱うため、体力が衰え積めなくなってきているし、若い職人はまだ技術がなく、石垣をつくれる石工職人が少なくなっている。こうした、若い人が育たない背景には、ほとんどが既成のコンクリート製品に変わってしまい、石づくりの土留めや石垣のニーズがなくなっていることが大きな要因として上げられる。
これからの石工職人は、「単にニーズに応えるだけでなく、いかに提案力を持つかが重要」と語る舩越さん。石工職人である自分たちがしっかりしたポリシーを持つことで、その姿が石工職人のブランド化になっていくという。
山形県石材技能士会で講師をしながら、後継者を育成する為に今後は「技能五輪2016山形大会」に向けた参加者の育成、石工職人の育成に力を注ぎたいと語っていた。