塗装
古い建築物に塗装を施すことで
吹き込まれる、新たな力と魅力。
塗装士はその技術を持って、
人々の暮らしや地域の景観を守り続けていた。
※所属等は取材当時のものであり、現在と異なる場合があります。
塗装工になりたい。
センスをカバーした絶え間ない努力
街で見かけた塗装をする職人の姿。古い建物を丁寧に塗り替え、美しく変化していく様子を目の当たりにし、塗装工になりたいと決意した水見江一さん。もともと外壁の吹き付けを行う職人として5年ほど勤めてからの転職だった。
たくさんの知識と技術を身に着けたいと入社した、株式会社カトペン。はじめは吹き付けの技術をある程度取得していたことから、簡単にできる仕事だろうと安易に考えていたものの、実際に行ってみるとベテランとの仕上がりに違いが。もっと技を磨きたいという気持ちに駆られたそう。また、まだまだ職人歴の浅かった頃には、外壁の補修を依頼され行ったところ、下地の色との違いにクレームを受けたことも。
「今は材料がすでに調合されていることが多いんですが、昔はちょっとしたものなら色を合わせて作っていました。古い外壁を全部ではなく、一部だけ補修するなどといった色合わせが難しくて。センスも問われる仕事です」。
仕事をこなしながらも、水見さんは会社に戻って空いた時間や、帰宅した後など、こっそり調色の練習を重ねた。「上手だね、って言われるようになって本当にうれしかったです。私にはなかなかセンスがなかったので、努力と経験でカバーしてきました」。
その後1級建築塗装技能士や、1級綱橋塗装技能士などの資格も取得。株式会社カトペンに15年ほど勤め独立、ペイントワーク ミズミとして5年、その後、株式会社mizumiとして3年目を迎えた。「カトペンでは技術はもちろんですが、なによりお客様とのコミュニケーションの大切さを学びました。挨拶から、細かな作業の説明まで、真心を持って対応すること。今でも当社の社員に同じように伝えていますよ」。
お客様の思いに沿った
最善の仕上がりを提案
株式会社mizumiが行うのは、主に置賜地域のお客様を中心とした屋根塗装や外壁塗装、内装塗装から、防水塗装やリフォームなど。機械を使った吹き付けの技術力も高く、個人宅から大きな建築物まで広く手掛けている。「職人の仕事は、どこか自己満足の世界でもあったりします。しかしお客様に喜んでもらうのが一番。希望の価格や仕上がりはどうかといった思いに沿って、なぜこの塗料が良いのか、この工法がいいのか、理解していただいた上で作業を進めていきます」。
塗装の魅力は、古い構造物に新たな息吹を吹き込むこと。見た目だけではなく、木材には保護塗料を定期的に塗ることで、カビや劣化を防いだり、屋根には専用塗料を定期的に塗ることで、水漏れやサビを防ぐなど、下地を守る効果も。「『ペンキ塗りは誰でもできる』と思われがちですが、やればやるほど奥が深いなと感じています。塗る前の細かな下地調整や、選択した塗料の見極めによって、仕上がりは全く異なります。塗った直後には分かりずらいかもしれませんが、そこからの耐久性が違いますね」。
確かな技術と豊富な経験、そして的確な対応から、お客様は口コミで増え続けている。そして工具や塗料、建築の方法も日々進化。水見さんは今でも様々な情報を得ながら、学びや研究を欠かさず行っている。
職人を増やして
美しい街並みを保ちたい
「職人ってなるのが難しそう、って思われがちですよね?私はセンスがありませんでしたから、努力と経験でたくさんのスキルを得ることができました。どんな職人も、頑張れば誰にだってなれるのです。皆さんに職人の魅力を知って、目指してほしいと思います」と水見さん。仕事が終わってから職人同士で集まり、お酒を交わしながら現状や目標をワイワイと熱く語り合う時間が、とても有意義で楽しいひと時とのこと。「そして塗装工の職人ももっと増えてほしいと願っています。それは私の会社の社員に限ったことではありません。塗装工の職人が増えれば、その地域の建築物を守ることができ、景観を美しく保つことができます。景観が良い街には、遊びに来たくも、住みたくもなりますよね」。水見さんの想い描く、職人が活き活きと活躍する未来から、人々が心地よく暮らす街の様子が伝わってきた。