更新日:2021年2月18日

ここから本文です。

2月定例会(令和3年2月18日)

 県議会2月定例会の開会に当たり、一言申し上げます。

 

 東日本大震災から間もなく10年となりますが、2月13日の深夜、その余震と考えられる地震が発生いたしました。宮城県と福島県では最大震度6強、本県では最大震度5弱を観測し、本県を含む10県(2月17日現在)で被害が確認されております。負傷された方々や家屋等の被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。
 この地震により、東北新幹線の一部区間が当面運休となり、ビジネスや受験などへの影響が懸念されるところです。
 県では、地震発生後直ちに災害対策本部を設置し、市町村や防災関係機関などと連携して、被害状況の把握等を進めてまいりましたが、今後も余震の可能性があり、引き続き、雪崩や土砂崩れなど二次災害に警戒し、危険箇所の巡回などを進めてまいります。

 

県政運営4期目に当たって

 新型コロナウイルスの感染拡大に直面し、まさに国難とも言える社会経済情勢の中にあって、私は「コロナ克服・山形経済再生」を掲げ、多くの県民の皆様から御支持をいただき、再選させていただきました。
 4期目に当たり、知事就任以来、一貫して掲げてまいりました「心の通う温かい県政」の基本姿勢に立ち、3期12年間で積み上げてきた実績を基に、さらに暮らしやすい県づくりに向けて施策等を展開してまいります。その際には、県議会の皆様や市町村の皆様と一丸となって、さらには、全国知事会の活動等を通して政府にしっかり提言を行うとともに、十分に連携して事業を実施してまいります。
 ここ山形県で暮らし続けたいという県民の皆様の思いを何よりも大切にしながら、故郷(ふるさと)山形の輝かしい未来を創るため、引き続き全力を尽くしてまいります。

 

本県を取り巻く情勢

次に、新型コロナへの対応等について申し上げます。

(国内外及び県内の感染状況等)


 新型コロナの感染者は、全世界で1億人を超えました。欧米などでは既にワクチン接種が始まっておりますが、感染力が強いとされる変異株による感染も広がるなど、未だ感染拡大に歯止めがかからない状況が続いております。

 

 国内では、昨年11月から新規感染者の増加傾向が強まり、年末からは首都圏などを中心に感染が急拡大しました。政府は、1月7日に、首都圏の1都3県を対象区域として2月7日までの緊急事態宣言を発出し、1月13日には、関西圏などの7府県を対象区域に追加しました。その後、2月8日からは10都府県を対象区域として3月7日まで期間が延長されたところです。

 

 県内でも、昨年12月に医療・福祉施設や飲食店でクラスター(感染者集団)が発生するなど、新規感染者が急増し、病床占有率の上昇や、重症入院患者の増加が懸念されました。こうした状況や全国的な感染拡大傾向などを全体的に判断し、12月11日に、本県の「新型コロナ対応の目安注意・警戒レベル」をレベル4の「特別警戒」に引き上げ、帰省などの移動は慎重にしていただくことや、会食の際の感染防止対策の徹底などを呼びかけてまいりました。
 また、政府による緊急事態宣言の発出や、県外との往来に起因すると推定される感染事例も踏まえ、緊急事態宣言の対象区域との不要不急の往来や、県外の方との会食や飲食は控えていただくようお願いしているところです。

 

 全国では、政府による緊急事態宣言の発出後、新規感染者数は減少傾向となっておりますが、変異株による感染者も確認されるなど、今後の動向が懸念されるところです。県内の新規感染者数は、1月中旬には落ち着いた状況となりましたが、その後、福祉施設におけるクラスターの発生など、新規感染者が断続的に確認されており、本日までの累計で535人となりました。引き続き感染拡大への警戒が必要な状況と捉えております。早期に地域経済の再生を図るためにも、今は気を緩めることなく、感染防止に努めることが重要であります。
 県民の皆様には、感染のリスクが常に身の回りにあるという意識を持っていただき、暮らしや働く場で、マスクの正しい着用をはじめ基本的な感染防止対策をいま一度徹底していただくようお願いいたします。
 また、事業者の皆様には、感染拡大予防ガイドラインの遵守を徹底していただくよう、改めてお願いいたします。

 

(新型コロナワクチン接種)

 次に、新型コロナのワクチン接種について申し上げます。
 政府では、新型コロナ感染症対策の重要な柱として、全国で新型コロナのワクチン接種を実施することとしております。本県におきましても、コロナ克服の要として、県民の皆様に円滑かつ確実にワクチン接種を受けていただけるよう、新型コロナワクチン接種総合本部を1月19日に設置し、全庁を挙げた取組みを進めているところです。
 政府が目指す接種スケジュールが順調に進めば、本県でも、3月中旬からは医療従事者、その後、高齢者等への接種が開始される予定となっております。県民の命と健康を守るため、市町村や関係機関・団体等と連携し、県として総合的に調整を行い、市町村におけるワクチン接種の円滑な実施を支援してまいります。

 

(山形県PCR自主検査センター)

 次に、「山形県PCR自主検査センター」の設置について申し上げます。
 新型コロナの再流行に伴い、県民や企業の方々の間で感染に対する不安が増大していることなどから、自費によるPCR検査や陰性証明に対するニーズが高まっております。このようなニーズに応え、県民や企業の方々の不安解消や社会経済活動の支援を図るため、県立河北病院に「山形県PCR自主検査センター」を設置いたします。
 検査の対象者は、行政検査の対象とならない県内居住者等とし、検査料は5,000円と考えております。現在、PCR検査機器の購入などの体制整備を進めているところであり、3月中にはセンターを開所し、検査を始められる予定です。

 

(経済活動の持続と回復に向けた取組み)

 次に、経済活動の持続と回復に向けた取組みについて申し上げます。
 新型コロナによる経済への影響が長期化・深刻化しておりますので、県では中小企業・小規模事業者の資金繰りを支援するため、政府の補正予算を活用した3年間無利子・10年間無保証料となる「新型コロナウイルス感染症対応資金」について、申込期限を3月31日まで延長するとともに、2月1日から貸付限度額を4千万円から6千万円に引き上げました。
 また、11月以降県内でも新型コロナの感染が拡大し、これまでにない厳しい経営状況にある、夜間営業の飲食店等の事業継続のため、県独自の緊急支援給付金を12月21日から開始しました。2月16日現在、2,604件、5億230万円の支給を行っております。
 雇用の維持につきましては、政府の雇用調整助成金の緊急対応期間について、本年6月末まで再延長するよう、私から全国知事会を通し改めて政府に強く要請したところであります。その結果、本年2月末までとされていた緊急対応期間について、緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末まで延長するとされたところです。引き続き、県内の雇用情勢等を踏まえながら、必要な期間の延長等について要請してまいります。
 また、本県独自の「山形県プレミアム付きクーポン券」、観光需要喚起のための「県民泊まって元気キャンペーン」、「県民泊まって応援キャンペーン」及び「『バス・タク旅』やまがた巡り事業」につきましては、県内の感染状況等を踏まえ、1月26日から一定の制限の下で再開するとともに、利用期間を3月31日まで延長いたしました。
 今後とも、県内中小企業・小規模事業者の事業継続と雇用維持に全力で取り組むとともに、今後の県内の感染状況等を踏まえた適切な消費喚起に努めてまいります。

 

 県としましては、県民の皆様の命と生活を守るため、ワクチンの円滑な接種に向けた体制を早急に確立するとともに、地域経済の再生にもしっかりと取り組み、安心して社会経済活動ができる環境づくりを進めてまいります。
 今後とも、県議会の皆様はじめ、県民の皆様、事業者の皆様の御理解と御協力をいただきながら、県内市町村はもとより、政府や関係機関・団体との連携を密にし、新型コロナを乗り越えてまいりたいと考えておりますので、引き続き、御理解と御協力をお願い申し上げます。

 

今冬の大雪の状況等

次に、今冬の大雪の状況等について申し上げます。

 今冬の大雪により、雪下ろしや除雪作業中の事故が相次いでおり、人的被害は、2月17日現在、死者13名、負傷者163名の合計176名と過去5年の同時期としては最も多くなっております。
 亡くなられた方々と御遺族の皆様に深く哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。
 県内では12月14日から内陸を中心に大雪となり、さらに年末からは上空に強い寒気が入り、庄内では暴風雪となるなど県民生活への影響や農林水産関係被害が生じました。県では、1月1日に山形県豪雪災害対策本部を設置し、道路除排雪の徹底をはじめ、農作物等被害状況の把握とその防止に向けた技術対策の徹底、雪害事故防止の注意喚起などについて、市町村や関係機関と連携して対応を進めております。
 2月5日には、県市長会、県町村会とともに、政府に対し、「豪雪災害に関する緊急要望書」を提出しました。特に、道路除雪費につきましては、県、市町村ともに平年を大きく上回る経費を要していることから、国土交通省に対し、県と県市長会、県町村会が連携し、オンラインにより、追加配分を要望したところです。その結果、2月12日に、国土交通省から、県の道路除雪費補助として約6億2千万円、市町村への社会資本整備総合交付金として約1億7千万円の追加配分が示されました。
 農林水産関係につきましては、調査は継続中でありますが、2月15日時点の被害総額は約9億8千万円にのぼっており、被災農業者の皆様の営農意欲の著しい低下が懸念されます。
 そのため、本県の呼びかけにより、北海道東北地方知事会として、政府に対し、農業被害に対して十分な支援策を講じるよう求める緊急要望書を取りまとめ、1月29日に農林水産省へ提出いたしました。その後、2月2日には、政府による被災農業者への支援対策が公表されたところです。
 県では、12月に発動した県単独災害対策事業等による支援策に加え、市町村及びJAとの連携・協調による緊急対策を「今冬の大雪等による農業被害緊急対策パッケージ」として追加し、2月9日に発動いたしました。今後、政府の支援策を最大限活用するとともに、これをさらに充実・補完する本県独自の支援策を併せて講じることにより、被災農業者の営農意欲が低下しないようにし、農業生産の維持向上を図ってまいります。

 

 それでは、提案いたしました議案の説明に先立ち、県政運営の所信の一端を申し上げ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

 

これからの県づくりの基本的考え方

 新型コロナの感染拡大に伴う日常のあり様や価値観の変容、急速なデジタル化の進行、東京一極集中から分散型社会への流れなど、時代は大きな転換点にあると考えております。
 こうしたことから、今後は、新型コロナ対策とあわせ、ポストコロナの社会を見据え、デジタル技術の活用といった新しい発想や手法を積極的に取り入れながら、誰一人取り残されることのない持続可能な県づくりを進めていく必要があります。

 本県は、「全47都道府県幸福度ランキング」で8位と高い評価をいただいたように、歴史、自然、芸術文化、スポーツなどの地域資源、人と人との絆、ものづくり技術など、誇るべき魅力や価値が数多くあります。私は、こうした本県の魅力や価値を最大限に活かしながら、県民の皆様とともに、5つのテーマにチャレンジし、世界に誇れる山形ならではの「幸せな育ち、幸せな暮らし」の実現を目指してまいります。

 

 一つ目は、「子育てするなら山形県」の実現であります。
 少子化や人口減少は、地方が抱える共通の課題であり、若者の県外流出、とりわけ女性の流出抑制に力を入れていく必要があります。そのためには、子育てをはじめ暮らしや仕事、文化などの魅力向上に向けた環境整備が重要であります。
 出会いから結婚、妊娠・出産、子育てまでの切れ目のない支援をさらに強化し、子育てに要する費用について、出産費用から高校授業料までの完全無償化を段階的に進めてまいります。住まいなどの子育て環境の整備や、家庭と仕事の両立支援、教育環境の充実など、子育て支援を積極的に展開し、若い世代の移住者も呼び込んでまいります。
 また、女性の活躍の観点からは、「女性活躍推進懇話会(仮称)」を設置し、女性の賃金向上と若年女性の県内定着・回帰に向けた地域社会の環境づくりに力を注いでまいります。
 こうした取組みを通し、子育て世代にとって魅力的な環境づくりを進めるとともに、首都圏を中心として地方への関心が高まる中で、ワーケーションをはじめ多様な滞在プログラムの展開など、新たな視点に立った移住・定住施策も積極的に推進してまいります。

 

 二つ目は「健康長寿日本一」の実現であります。
 新型コロナの感染拡大により地域医療・福祉サービスの重要性が改めて認識されるとともに、高齢化の進展に伴い、医療・介護への対応が大きな課題となっております。
 このため、発達障がいや医療的ケア児などへの対策強化、県民の健康づくりや予防医療の取組みの強化、持続可能な医療提供体制の確保を進めてまいります。
 加えて、障がい者の就労・多様な社会参加の促進、自殺や虐待、引きこもり等への対策の強化など、各地域で、必要なサービスがしっかりと提供される体制づくりを進めてまいります。

 

 三つ目は「県民幸せデジタル化」であります。
 新型コロナを契機として、社会全体で急速にデジタル化が進んでおります。
 誰一人取り残さない「Yamagata幸せデジタル化構想」の理念に基づき、すべての県民がデジタル化の恩恵を受けられる社会づくりを進めてまいります。
 行政事務のオンライン化、買い物支援など住民の利便性や暮らしの質の向上のため、デジタル技術の活用を推進してまいります。
 産業分野におきましても、生産性向上につながるIoTやAI、ロボットなどの活用を促進していくとともに、デジタル人材の養成を進めてまいります。
 こうした県内のデジタル環境の整備を進めながら、多様で柔軟な働き方を推進し、移住や交流人口の増加にもつなげてまいります。

 

 四つ目は「1人当たり県民所得」の向上であります。
 慶應先端研のバイオ関連など本県が誇る世界最先端の技術を活かし、産業の集積を支援するとともに、次世代型医療やヘルスケア産業などの創出に向けた医工連携プロジェクトを推進いたします。また、電気自動車やロボットなど成長が期待される産業分野における事業化の促進、若者や女性の創業、新分野進出などのスタートアップ支援などに取り組んでまいります。
 農林水産分野につきましては、生産額ベースの食料自給率200%超の実現を目指して施策を展開してまいります。高度な知識を持った農業経営人材の育成やICTを活用したスマート農業の拡大のほか、畜産業の振興や、「やまがた森林ノミクス」による林業支援と地域活性化、水産物のブランド化等による水産業の振興にも取り組んでまいります。
 さらに、この4月から始まる東北DCを契機に観光誘客を促進するなど、本県が誇る精神文化や地域資源を積極的に活用し、観光・交流の拡大を進めてまいります。
 こうした取組みにより、イノベーションを創出し、高い付加価値を生み出す産業基盤を形成するとともに、賃金の上昇につながるよう、企業等が人材への投資を加速しやすい環境を整備してまいります。

 

 五つ目は「やまがた強靭化」であります。
 昨年7月の豪雨災害により県内で大きな被害が発生し、現在、復旧・復興に全力を挙げて取り組んでおります。近年、全国的にも災害が頻発・激甚化していることから、県民の命と財産を守るため、災害に強い安全安心な社会を構築してまいります。
 具体的には、河川整備や流下能力向上などの治水対策の強化、自主防災組織やボランティアの育成による地域防災力の向上など、ソフト・ハード両面から防災力を強化してまいります。また、地球温暖化による気候変動が災害の発生に大きな影響を与えていることを踏まえ、SDGs(エスディージーズ)(持続可能な開発目標)の観点からも、洋上風力発電の早期導入など再生可能エネルギーのさらなる導入拡大や、「ゼロカーボンやまがた2050(ニーゼロゴーゼロ)」宣言に基づく取組みを推進してまいります。
 県勢発展の基盤となる社会資本の整備につきましては、人々の交流拡大やリダンダンシーの確保に向け、高速道路・地域高規格道路の整備促進、フル規格新幹線や福島~米沢間トンネルの早期実現などに取り組んでまいります。併せて、県民の暮らしに欠かすことができない地域公共交通ネットワークの充実にも努めてまいります。

 

決意・結び

 現在、本県をとりまく社会経済情勢は、新型コロナの感染拡大や相次ぐ災害発生などにより極めて厳しい状況にあり、令和2年度は、これらの対策のため随時補正予算を編成したことなどにより、県財政も極めて厳しい状況にあります。
 こうした中ではありますが、ポストコロナを見据えた将来への投資も併せてしっかりと行っていく必要があると考えております。さらなる選択と集中を進め、持続可能な財政運営に努めながら、効果的・効率的な県政運営を推進してまいります。

 

 引き続き「県民視点」、「対話重視」、「現場主義」を基本としながら、「コロナ克服・山形経済再生」に最優先で取り組み、県議会の皆様、市町村、関係機関、県民の皆様とともに、「人と自然がいきいきと調和し、真の豊かさと幸せを実感できる山形」の実現を目指し、全力で取り組んでまいります。

 

次に、このたび提案いたしました令和3年度当初予算について御説明申し上げます。

令和3年度当初予算を取り巻く環境

 令和3年度の地方財政につきましては、新型コロナの影響により地方税等が大幅な減収となる中で、地方の安定的な財政運営に必要となる地方一般財源総額は、普通交付税の交付団体ベースで令和2年度を上回る額が確保されました。
 本県の一般財源につきましては、地方交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税は増加を見込んでおりますが、一方で、県税は新型コロナの影響により減少の見込みとなり、引き続き厳しい予算編成を余儀なくされたところであります。

令和3年度主要施策等

 次に、新年度における主要施策の概要について、「令和3年度県政運営の基本的考え方」に基づく5つの視点に沿って御説明申し上げます。

はじめに、第一の視点「ふるさと山形力の向上」について申し上げます。

 「子育てするなら山形県」の実現のため、子育て費用の段階的な完全無償化に取り組んでまいります。具体的には、「出産支援給付金」を創設するとともに、現行制度で無償化されていない世帯の0歳児から2歳児までの保育料について、市町村と連携して子育て世帯の負担軽減に段階的に取り組んでいくほか、私立高等学校等の授業料軽減のための支援額を拡充いたします。
 また、結婚に係るワンストップ相談やマッチングシステムによる出会い支援を強化するため、「やまがたハッピーサポートセンター(仮称)」を中核組織として市町村と連携し、実効性の高い総合的な結婚支援事業を展開してまいります。
 政府の第3次補正予算を受け、特定不妊治療の助成の拡充や、不育症に係る検査費用の助成を実施いたします。
医療的ケア児の通院時支援の自己負担と通院距離制限を撤廃するとともに、利用上限回数を拡充いたします。
 こども医療療育センターにおける発達障がい児の初診待機期間の短縮のため、常勤医師を1名増員するとともに、新たに公認心理師による発達検査を行い、ICTを活用して助言やフォローアップができる体制を県内4地域に構築いたします。
 女性の賃金の底上げや職場の処遇改善を図るため、正社員に転換した事業者に加え、新たに若年女性の非正規雇用労働者の賃金を一定以上引き上げた事業者に対し、支援金を支給いたします。

 

次に、第二の視点「保健・医療・福祉の充実等による安全・安心な社会づくり」について申し上げます。

 新型コロナのワクチン接種体制に万全を期すためコールセンターを開設するとともに、県民や企業の方々の不安解消や社会経済活動の支援を図るため、県立河北病院に「山形県PCR自主検査センター」を設置いたします。また、新型コロナ患者等の入院のために専用病床を確保した医療機関等に対する空床補償や、PCR検査に係る公費負担などを引き続き実施いたします。
 新型コロナの影響により高齢者の外出が制限され、健康維持にも影響が出ていることから、タブレット端末等を活用したモデル事業により、健康維持をはじめ高齢者の生活を支援してまいります。
 大学医学部の「重粒子線がん治療装置」の開発整備を支援するとともに、希望する多くの県民が治療を受けられるよう、市町村と連携して治療費を助成いたします。また、将来的な医療ツーリズムの確立に向け、治療に訪れた方などに対し、県内の温泉旅館で使えるクーポン券を配布し、本県の豊かな温泉や食をPRしてまいります。
 加えて、山形大学医学部と連携し、がんの発症や生活習慣病の予防に資する調査研究を実施するとともに、調査結果に基づき、がん克服に向けた取組みを促進してまいります。さらに、若年がん患者が治療の前に受精卵等を凍結保存する場合の費用を助成いたします。
 

次に、第三の視点「産業経済の振興・活性化」について申し上げます。

 ポストコロナを見据え、企業の成長の柱となる新製品・新技術開発などのイノベーション創出や、デジタル化の推進に向けた設備投資などを支援いたします。
 また、新型コロナの影響で苦境にある中小企業・小規模事業者を強力に支援するため、商工業振興資金の令和3年度新規融資枠を850億円設定いたします。さらに、創業支援ワンストップ窓口及び県内コワーキングネットワークの中核的機能などを有する「山形県創業支援センター(仮称)」を創設いたします。
 観光需要回復に向けた「県民泊まって元気キャンペーン」の更なる展開のため、クーポンを追加で発行するとともに、出羽三山や出羽百観音に代表される、本県が誇る精神文化の認知度向上及びブランドコンセプトに基づく動画の制作・配信、魅力的なコンテンツの発信などデジタルプロモーションを行います。

 

次に、第四の視点「農林水産業の振興・活性化」について申し上げます。

 地域農業を支える多様な担い手を確保・育成するため、オーダーメイド型の補助制度を創設し、市町村と連携してソフトとハード両面から支援いたします。
 明日の農林業を担うグローバルな高度人材の育成を推進するため、専門性が高く実践的な教育を行う東北農林専門職大学(仮称)の設置に向け、基本計画、基本設計、実施設計等を進めてまいります。
広域での衛星画像解析によるつや姫の生育診断や、環境モニタリングセンサーのきめ細かな設置による生産の効率化など、農林業のデジタル化を進めてまいります。
 新規漁業就業者の確保のため、漁業研修を始めるために必要な準備を支援するとともに、独立後3年間の所得を補償する制度を創設いたします。また、水産業の成長産業化に向けた漁業者のチャレンジを応援するため、オーダーメイド型の補助制度を創設し、市町村と連携してソフトとハード両面から支援いたします。さらに、遠隔監視を活用したポータブル蓄養ユニットの実用化に向けた取組みを進めるとともに、漁業試験調査船「最上丸」に衛星通信機能を付加するなど、水産業のデジタル化を進めてまいります。

 

次に、第五の視点「やまがた強靭化」について申し上げます。

 政府の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」に対応し、河道掘削や堤防強化、橋梁やトンネルの長寿命化、防災重点ため池の改修・補強などを進め、近年大規模化・激甚化している災害への対策に取り組んでまいります。また、令和2年7月豪雨と同規模の洪水等に対して浸水被害が生じないよう、最上川の支川(しせん)など県が管理する河川の治水対策について、政府の国土強靭化5か年加速化対策等の予算を活用するとともに、国土交通省が行う最上川本川(ほんせん)の治水対策とも連携しながら、令和2年度から令和11年度までの10年間で重点的に実施してまいります。
 避難所運営等を主導・指導できる防災士の養成などにより、地域防災力の一層の向上を図ってまいります。
 今年度から活動している「やまがたAI部」の生徒が県内ものづくり企業の視察やIT関連企業での実習を行うなどにより、将来、県内で活躍するAI人材を育成してまいります。
 家庭及び事業所への再生可能エネルギーの設備導入を支援するとともに、災害対応力の向上を図るため蓄電池やV2H(ブイツーエイチ)の導入に対して支援いたします。
 小国町明沢川(みょうざわがわ)地点において、新たな水力発電所の建設に向けた実施設計を行い、「山形県エネルギー戦略」の推進と地域の活性化を図ってまいります。
 「ゼロカーボンやまがた2050(ニーゼロゴーゼロ)」の達成に向け、有識者・産業界・一般県民等の各層、各年代からなる「ゼロカーボンやまがた推進会議」を設置するとともに、県としても公用車の電気自動車化を進めてまいります。

 

 

 これら施策を推進するため所要の予算を計上した結果、一般会計当初予算額は、6,823億4,300万円となりました。
 また、公債管理特別会計など10特別会計予算は、合計で2,526億5,093万円余となりました。

 

 財政運営につきましては、今後を展望しますと、依然として多額の財源不足が生じる厳しい状況が見込まれるところですが、産業の振興により、県民所得の向上、県内経済の成長につながる好循環を生み出し、県税収入の増加を図っていくことが重要と考えております。
 そのうえで、今回の予算編成と同時に策定した「山形県財政の中期展望」において、歳入面では、県有財産の売却や有効活用の促進、基金や特別会計の有効活用等を図るとともに、歳出面では、引き続き事務事業の見直し・改善や、行政経費の節減・効率化などに取り組むこととしております。
 こうした歳入・歳出両面からの対策を講じつつ、中長期的な財政健全化を推進するため、県債残高の減少と調整基金の確保に引き続き努めてまいります。

 

令和2年度2月補正予算

 次に、令和2年度2月補正予算について御説明申し上げます。
 まず、政府の第3次補正予算への対応としまして、防災・減災、国土強靭化の推進のための公共事業等を追加するとともに、生活福祉資金等の貸付原資を、貸付主体である山形県社会福祉協議会に追加交付するほか、東京オリンピック・パラリンピック競技大会のホストタウン等における、感染症対策のための基金への積立金などを追加いたします。
 また、今冬の大雪への対応のため、道路除雪費を増額いたします。
 こうした対応に、今年度の執行実績等による減額を合わせますと、一般会計の2月補正予算総額は、26億5,400万円の増額となりました。
 繰越明許費につきましては、ただいま申し上げた政府の補正予算への対応など、総額で381億4,516万円余を増額補正いたします。
 

予算以外の案件

 次に、予算以外の案件の主なものについて御説明申し上げます。
 山形県副知事の選任につきましては、任期満了に伴い、提案の者を適任と認め、御同意をお願いするものであります。
 山形県部設置条例の一部を改正する条例の制定については、県行政組織の機能を強化し、行政の効率的運営を図るためのもの、山形県水産振興条例の設定については、水産振興に関し、基本理念を定め、県の責務並びに水産業者及び県民等の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、水産振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するためのものであります。
 山形海区漁業調整委員会委員の任命につきましては、委員の任期満了に伴い、提案の者を適任と認め、御同意をお願いするものであります。

 

 

 以上が、今回提案いたしました議案の概要でありますが、内容の詳細につきましては、議事の進行に従いまして、関係部課長より御説明申し上げますので、よろしく御審議のうえ、御可決くださいますようお願いいたします。

 

お問い合わせ